うつ病のはなし

◎最近増加している!


  現代社会のストレス、社会の価値観の多様化により各種の精神疾患や不適応状態が増加しています。うつ病もその1つであり年々増加傾向にあります。現代では多くの人がうつ病になりやすい背景があります。高齢化社会、人間関係の希薄化、バブルの崩壊による不況など多くの深刻な問題を抱えています。
  この病気は一般人口の3%に存在すると言われており、精神科以外の一般診療科を訪れる患者の5〜10%がうつ病であるとされています。うつ病は20〜30歳代の若年から50〜60歳代の高年者に至るまで広い年齢層にみられます。女性では更年期障害に重なってうつ病が出現
します。また、高齢化社会を迎えるなかで老年者のうつ病が増加しています。また、最近では小児期、思春期にもうつ病がみられ自殺が増加しています。 
  うつ病になり易い人は趣味がないことが多いようです。真面目人間の落とし穴というか、その人から仕事を取ると何も残らないという生き方をしている人は要注意です。
  うつ病では気分・思考・行動面において抑制が現れます。気分の変化として、ゆううつ、淋しさ、孤独感といった抑うつ気分がみられます。それまで楽しみであった趣味やテレビや雑誌にも興味、関心がなくなります。また、疲労感が強く、気力が低下し、仕事をするのも億劫に感じます。不安、あせりが強く、いらいらしてじっとしていられないこともあります。
  思考面では思考の渋滞と決断力の低下がみられ、考えが先に進まず、同じことを繰り返し考えます。思考内容は悲観的となり、取り越し苦労や後悔が多く、劣等感、自責感を抱くようになります。うつ病の重要な症状として自殺願望があり、患者はこんなつらいなら、もう疲れはてて人生どうにでもなれという思いをしたり、生きていても仕方がないと感じ、しばしば自殺を図ります。
  行動面においても抑制がみられ、表情が乏しく、動作も緩慢となり、仕事の能率も悪くなります。口数も減り、外出や人に会うこともおっくうになり、家に閉じ込もりがちとなります。
  身体症状として不眠、早朝覚醒、熟睡ができなく日中の過眠を伴うこともあります。また食欲減退、食事がおいしくない、体重の減少などがみられます。また、頭痛、頭重感、肩こり、身体各部の痛み、動悸、めまいなど多彩な症状がみられます。うつ病は必ずなおるはずの病気ですから早めに専門医に相談して下さい。





◎うつ病者への対応法

  うつ病は誰でもかかりうる病気の一つです。はっきりとした理由もなく何ケ月も気分がしずみがちとなります。体の調子も悪くなります。周りの者から気のせい、考えすぎ、気の持ちようだなどと言われ、誰もわかってくれないと一人で悩むことも少なくありません。しかしうつ病は必ずよくなります。周囲の者はどのように対応すべきか述べてみます。

@まずは休養を優先させる。うつの患者はできる限り頑張ろうという気持ちが強いため、病気であることをよく説明し休ませることが何よりも大切です。

A必ずなおる病気である。うつ病は病気であってなまけではないことを理解し、なおる病気であることの保証を与えることは患者だけでなく家族にも重要なことです。

Bなおるまで人生上の重大な問題についての決定を延期し保留とする。うつ状態では思考の渋滞と決断力の低下があるため後で後悔しないよう判断を先に延ばす方がよいと思われます。しかし決断を引き延ばすことにより患者に負担がかかっているようであれば検討が必要です。

C励ましは禁物。責任感が強い人が多く、自分が怠けているとか、能力がないと感じていたり、周りに申し訳ないと思っていることが多いものです。「頑張れよ」とか「元気をだせよ」などといった励ましは絶対に禁物です。あたたかい家族の援助が大切です。

D自殺を絶対にしないことを誓約させること。悲哀感、自責感、絶望感を抱き、自殺についてあれこれと考えています。これはうつ病の一症状であって病気が必ずなおることを保証し、自殺を企てたりしないよう約束をとりつける必要があります。


E薬物治療が奏効する。うつ病の治療は現時点では薬物療法が最も効果的です。うつ状態や不安やあせりに対し、抗うつ剤、抗不安剤、不眠に対し睡眠剤が使用されます。10日から2週間ほどすると効果が出てきます。効果が出るのに少し時間がかかりますので最初のうち効かないからと言って勝手に薬を飲むのを止めないで下さい。よくなってからも少なくとも数ケ月は治療と予防をかねて飲み続ける必要があります。うつ病の薬はなおれば必ず止めることができますので主治医にカウンセリングを受けながら治療を進めて下さい。


 
  以上が守られれば、患者さんは不安がとれ、気持ちが楽になります。取り越し苦労もなくなり、自信も出てきてストレスに耐えられるようになります。




◎うつ病の再発の予防法について
  うつ病になりやすい人は仕事熱心で、熱中性、几帳面な生き方の傾向があります。昔の仕事人間は熱中して一生懸命やっていれば職場でも評価されていましたが、現代は職場で必ずしもその生き方が評価されてこなくなりました。日本人特有のつきあい文化は自己主張せず、自己犠牲や遠慮や気配りにより互いの依存関係を確認する特徴があります。その関係に属している限り個人は安心でいられます。ところが、つきあい文化も過剰になると高血圧、心臓病、過労死、心身症、うつ病の発生を多くさせます。自分の価値観がいずれ通用しなくなることも予測し、適切な適応様式がとれるよう日頃から検討しておくことが重要です。そのためには、趣味にいそしんだり、既成の概念にとらわれず、いろいろな生き方や価値観について興味をもつことが大切です。うつ病は再発率の高い病気です。1年以内で25%、5年以内で60%、10年以内では75%が再発すると言われます。従って、うつ病の治療は急性期の症状が消えた場合でも予防的な意味を含めて数ケ月以上、薬を飲み続けていただくことになります。しかし、最近の研究では4〜5年にわたり薬を飲み続けるほうが再発率が低いと言 われています。薬は、ふつう重大な副作用は起こりませんが、時に眠気、ふらつき、口の渇き、尿が出にくい、便秘などが起こることがあります。その時は主治医に相談して下さい。
  うつ病のなかには治療が長引いたり、再発を繰り返したりする難治例の増加が指摘されています。これらの患者さんの生活状況を理解することが必要で、適切な精神療法や環境調整や生活指導を行うことが大切です。1年に4回以上も再発するタイプのうつ病も存在します。この場合は、通常の抗うつ剤には反応しないため特殊な薬物治療が必要になってきます。少しよくなってくると家族の者はどうしても早く仕事に戻ってほしいとあせるものです。しかし、なおりかけの時に自殺やぶり返しをきたしやすいことから、患者さんを焦らせないようにする必要があります。もともと、責任感が強く、働き者できちんとしていないと気がすまない人たちですから、よくなれば放っておいても自分から仕事に出るようになります。病気が治ったあとに、発病の原因や本人の性格と環境との関係について家族とともに理解を深めることも再発を予防するために必要です。