◎チック
チックとは自分の意志に反して突発的に身体のどこかがピクピク動く、あるいは突発的に声や言葉を発することをいいます。発症は2歳以降、どの年齢でもおこり得ますが、6〜7歳にピークがあります。タレントのビートたけしさんが首をくねくねさせるのがこれです。従来、チックは乳児期にきびしくされたり、心理的な緊張を抱えたり、神経質な性格、神経過敏な状態が原因としてあげられていました。最近では、脳の大脳基底核におけるカテコールアミンやセロトニンといった中枢神経系の伝達物質の障害が推測されています。両者が相互に関わっているという考えも多くなされています。
運動性のチック症状として、顔面・頚部などの筋群に多くみられます。最もしばしばみられるのは、まばたきで、他に、首を左右または前後に振ったり、まわしたり、顔をしかめる、鼻にしわをよせる、口をとがらす、口をひん曲げる、舌をつきだす、首をふる、手足、肩や胴体をぴくりと動かすなどがあります。
音声のチック症状としては、声をだす、鼻をならす、突然の奇声、咳ばらい、言葉の繰り返し、「アッ、ウッ、オッ」「バカ、シネ、オッパイ」などの攻撃的、汚言的な発声がみられます。 これらの症状は、何かに熱中している時には、軽くなり、睡眠中は消失します。逆に、緊張した場面などでは症状が増強することがあります。
発症年齢、症状の起こり方、持続性などにより、いろいろなタイプがあります。
小児期の一過性のチックは12歳以前に発症し、症状は2週間から1年以内に自然に消失する特徴があります。
小児期あるいは思春期にみられるチック症状で1年以上持続し、思春期後期までには自然に消失するものがあります。また、症状が思春期以後も軽快、悪化を繰り返し慢性に生涯続くチックなどがあります。
治療として、患者とその親に、その症状にあまり注意を集中しないように助言します。精神的緊張をおこさせる環境があればその点に注意し調整指導をしていく必要があります。親の不安が強い場合や親子関係に問題が多い場合は、家族カウンセリングないしは子どもへの心理療法を行います。心理療法としては、行動療法、遊技療法、箱庭療法、絵画療法、催眠療法などが行われます。重度のチック症状の場合には、ドーパミン遮断薬であるハロペリドールが効果的です。その他、ピモジド、クロニジン、クロナゼパム、炭酸リチウムなどの薬物が使用されることがあります。
◎夜驚(やきょう)症
夜驚症は睡眠の最初の3分の1の間に起こることが多く、睡眠して1〜3時間して寝床から突然起き上がり、興奮して布団から飛び出したりします。その際に外見的には恐怖におびえた表情をして、うめき声を出したり大声で叫びながら目を見開いて歩き回ります。数分から10分位持続することがあります。強い不安と頻脈、呼吸促迫、発汗などの自律神経症状を伴います。周りの者が落ちつかせようとして話しかけてもほとんど反応しません。終わるとすぐに眠りに入り、翌朝の起床後には、このことを全く記憶していません。4〜12歳に好発し、2〜3年のうちに自然に消失するといわれます。
夜驚症の患児は、睡眠中に症状が現れている時に比較的まとまった行動を示すこともありますが、つかまえられたり触られたりすることに強く抵抗することが多いようです。身体をゆらしたり、たたいたり、ベットから起きあがったり、逃げ出したりすることがあります。このような行動は、脅威に対する自己防衛、または逃避の試みを表現していると考えられています。また、夜驚症の発生は、睡眠が深まるとともに自我機能が弱まり、それまで抑圧されていた心理的な外傷体験が突出してきたものであるという考えもなされています。
脳波学的には、睡眠にはノンレム睡眠といって1〜4段階まで存在しますが、夜驚症はそのうちの第3および4の睡眠段階で最も多くみられます。深い睡眠から急に浅い睡眠状態になった場合や覚醒が不完全な状態の時に生ずると考えられています。
夜驚症には脳波異常などの身体的要因の他、心理的葛藤といった情緒的要因の関与が指摘されています。
発症や悪化する因子として、疲労、発熱、次子出産、登園開始、転居、緊張、興奮、刺激過多、不安などがあげられます。
夜驚は症状の激しさから家族が睡眠不足となり、親の不安が強くなり、それが患児に影響し、さらに夜驚を増強させるという悪循環をきたすこともあります。
予後は良好であり、特別治療を加えなくても数年のうちには症状は消失するといわれています。
治療に関しては、心理的な原因をつきとめ親子関係の緊張と不安を緩和することを目的に家族カウンセリングないしは環境調整を行うこともあります。
薬物治療としては、第4段階の睡眠量を減少させるジアゼパムや抗うつ剤のイミプラミンが使用されます。
◎夜尿症
夜、眠っていて尿をもらすことは3歳くらいになると消失するのが普通です。3歳以降になってもおねしょがある場合、夜尿症と判断されます。4〜5歳の子供の10〜15%になお夜尿が持続しています。7歳の子供では10%、12歳の子供では3%くらいみられます。夜尿症は成長とともに自然になおっていくことが多いようです。
夜尿症には乳児期から引き続く場合の一次性夜尿症と、3歳以降に一端夜尿がなくなるが何らかのきっかけで夜尿が再び始まる二次性夜尿があります。一次性が8割を占めます。原因として、膀胱の筋肉の働きが未発達であるといった体質的な素因が関与していると考えられます。二次性夜尿症の原因は、弟妹が生まれ、親に急にかまってもらえなくなることが契機となったり、本人が赤ちゃんがえりし、夜尿が再び始まることが多いといわれます。
治療は生活指導、カウンセリング、行動療法、薬物療法などを組み合わせて行われます。一次性夜尿症の治療の基本は、年齢とともに治っていくことが多いため、夜尿をしても叱らないようにし、子供に劣等感をもたせたり、依存心を強めたり、ひねくれさせたりさせないようにすることが大切です。子供に「きっと治る」と安心感を与え、心理的な負担を少なくしてあげることが必要です。就寝前の水分をひかえめにし、夜間いつも決まって漏らす時間帯に一回、しっかり覚醒させてから排尿させることが重要です。イミプラミンなどの三環系抗うつ薬が夜尿症に効果的です。利尿ホルモンの分泌をおさえる薬物治療により夜尿がなくなり本人の自信につながる場合があります。また、条件反射的な訓練を目的として夜中、尿が漏れるとベルがなる尿警報装置を用いる場合もあります。
二次性夜尿症の治療は親子関係の調整が治療のポイントです。しかし、夜尿をおこしやすい素因も指摘されているため、治りにくい場合は、一次性夜尿症と同様な薬物治療や行動療法をおこなうこともあります
いずれにしても叱ったり厳しくしつけようとして、親が焦ったりすることは禁物です。子供の成長を暖かく見守ってあげることが大切です。