サラリーマンのストレス


◎OA症候群(働く人の心の病い1)


◎空の巣症候群(働く人の心の病い2)


◎荷おろし抑うつ(働く人の心の病い3)


◎昇進うつ病 (働く人の心の病い4)


◎燃えつき症候群昇(働く人の心の病い5)


◎うつ病と不眠症  (働く人の心の病い6)










◎ OA症候群(働く人の心の病い1)
  職場にコンピュータが導入され、OA(オフィス オートメ-ション)化の進歩にともない、 ディスプレイ 端末装置作業が増加したのが契機となり、OA症候群という職業病が蔓延しています。コンピュータ化により企業の生産性の向上は確かに現実のものになっていますが、生産性と業務管理があまりにも優先され、人間性が疎外されたり、人間関係が希薄化する傾向がみられ、OA化によるストレスを増大させる要因となっています。
 コンピュータの画面からは電磁波や微量の放射線が出ており、業務の内容は非常に心身ともに疲れるものです。その症状は目が疲れる、肩がこるなどの身体症状から、イライラや憂うつなどの精神症状までさまざまです。
 OA疲労を予防する作業姿勢や環境として以下のことに注意する必要があります。
(1)目によけいな光が入らないように照明に注意する。

(2)ときどき姿勢をかえたり、小休止の時にストレッチ体操などをして、首筋、肩、背筋、腰などの筋肉のこりをほぐす。

(3)画面、キーボード、書類の視距離はだいたい同じくらいで、目線はやや下向きにする。

(4)画面はいつも清潔にしておき、じゃまな光や陰が映り込まないようにする。

(5)肘の角度は90度以上、イスと太ももは手指が入る程度、靴底全体が床に着くような姿勢をとる。

(6)休日はなるべく遠くの景色をながめたり散歩するなどの目の保養をする。

(7)連続してOA作業に従事する場合は、1時間を越えないようにし、次の作業までに10〜15分の休憩時間を設けること。
 コンピュータによるストレスは、職場だけではなく家庭にも影響していることが考えられます。疲れきって帰宅し、口をきくのもわずらわしいぐらいに疲労困ぱいしてダウンする人もあるかと思われます。いくら若い人であっても作業量が多くなったり、長時間残業や不規則な生活が続き、心労が重なると心身のひずみが生じます。なかにはコンピュータが好きでたまらなかった人でも、いつも時間に追われ、緊張が続き、疲労が慢性化して、数年のうちになにもかもがいやになってしまうこともあります。
 これらの対策法として以下のことがあげられます。
@業務量や業務時間の再確認と調節をしておく。
A仕事の合間に休憩時間を定期的にとり、自分のことを考えたり、仲間と会 話したりする。
B帰宅する20分前には仕事をやめ、家族のことを思いうかべること。
C家庭や仕事以外の余暇を確保するなかで気分転換をおこない、心身の安 定をはかり健康を維持する。
D働く人の心の病気の対応には薬物治療やカウンセリングを受けるのも効果的。 これらのことを実践しても、また趣味やスポーツによる気分転換をおこなっても ストレスが除かれない場合には、長期的な配置転換をしたり、転職することによ り改善することがあります。

 

 

◎空の巣症候群(働く人の心の病い2)
  

 

 かつては夫との親密な愛情で満ち、子供たちも母親中心であった家庭が、夫は仕事や趣味に多忙であったり、単身赴任などで不在がちとなります。子供は思春期を迎え、進学や就職などによって巣立っていく時期を迎えます。そんな時、愛の巣が空っぽになったという体験とともにおこる空虚感、孤独感や抑うつ感などの症状を空の巣症候群といいます。同じ状況の父親についてもいわれることがあります。
 ひたすら夫や子供につくしてきた良妻賢母型の主婦が、子育てという荷下ろしがすんだ頃、自分の人生をあらためて振り返り、「これまでの人生は一体何であったのか」「これでよいのか」とむなしい気持ちになり、一人ぼっちになったと落ち込みます。また、更年期と重なるため、のぼせ、発汗、動悸、食欲低下、疲労感、イライラ、不安感、不眠など心身の不調があらわれます。
 この症候群は、女性が自己中心的な心理状態におちいり、うつ状態、アルコール依存、離婚に至るなどの現象がみられます。また、そのむなしさを除くためさまざまな虚栄や欲望をみたそうとします。度がすぎると日常生活上、あるいは社会的にも不適応行動がみられる場合があります。
 今や人生は80歳までの時代です。女性は結婚、出産、子育てがすべてではありません。子育てが終了した後にも自分の人生を問い直すための十分な時間があります。
 夫や子供だけが生きがいになっている人たちは空っぽの巣箱に一人とり残されないために以下のことに注意する必要があります。

 

@完璧癖をもたない。

 

A時には、手をぬいて、気分転換してみる。

 

B夫に頼りすぎない。

 

C子育てがすべてという生き方を見直す。

 

D他人の評価ばかりを気にしない。

 

E母親として以外の自分の役割について考え
ておく。
F若い時から趣味を持つ。

 

Gプラス思考ができように心がける。

 

H若い人流の冒険心や自分主義を見習う。

 

I不調なら薬物治療やカウンセリングを受ける。

 更年期の女性にとって、避けられない現実として老化していく体を受け入れる一方で、母親として以外の自分の役割を追求していくことは次なる「第二の思春期」を送る上で非常に重要な課題であると思われます。

 


 

◎荷おろし抑うつ(働く人の心の病い3)

 

 ストレスは一般的には精神症状を悪化させると考えられていますが、そのストレスが軽くなったり、消え去った後にあらわれるうつ状態を「荷おろし抑うつ」といいます。
 自分がめざす大学に合格したり、念願の会社に入社したときや昇格し、人事の争いからやっと逃れ出たときのように人生の目標が達成された場合や、嫁姑関係でずっと悩み、耐え続けてきた嫁が、当の姑が亡くなりストレスが解消したと思われる時期に抑うつ状態におちることがあります。
 病気になる前の性格傾向は執着気質やメランコリー型と呼ばれる性格で特徴づけられます。この性格の持ち主は真面目で几帳面、仕事熱心、熱中性、責任感が強いタイプですが、その反面、何か一つのことにこだわりだすと、それが頭にこびりついて離れなくなり、そのことだけにとらわれてしまいます。また、周囲の者に配慮する気持ちが非常に強く、人の関係や組織の中で秩序を保とうとする傾向が強い性格の人にこの種の抑うつ状態がみられることが多いようです。
 このような人にとって引っ越し、転勤、昇進などは慣れ親しんだ状況から出て、新しい秩序をつくりなおす必要があり発病の危機となります。
 この病気にならないためには、以下のことに注意する必要があります。

 

@自分の性格、価値観や行動様式をみつめなおす「自分さがし」を日頃から行っておく。

 

Aいろいろな価値観や生き方があることに興味をもち、理解する姿勢をもつ。

 

B自分の価値観がいずれ通用しなくなることを予測し、本を読んだり、人の話を聞いたりして適応方法や解決法について日頃から検討しておく。

 

C「人間は頑張れば乗り切れる」などと考えない。もう少し先々も頑張って生きたいと考えるならば、むしろ今は自分の力をセーブして、そこそこでよいと思って進めるべきである。

 

D自分をわかってくれ、受けとめてくれる人が周りにいることが大切。仕事面、将来のこと、自分の気持ち、考えや悩みごとについて聞いてくれたり、認めてくれたり、話し合ったり、評価してくれる人をみつけておくことが望ましい。

 

E何かにうちこめる趣味、娯楽、運動、スポーツをみつけたり、地域活動やボランティアに参加して仕事とは別の世界をもつことによって気分転換をはかる。

 

 

 

◎昇進うつ病 (働く人の心の病い4)

 

 係長から課長に、課長から部長に昇進したことを契機におこる抑うつ、不安や緊張状態をいいます。待ちに待った昇進の辞令が逆にストレスとなり、うつ状態に陥ることがあります。昇進に伴う慣れない部署への配置替えや傾いた子会社への昇進しながらの出向も含まれます。昇進による職場や環境の変化に伴うストレスが、一気にあふれ出て、うつ病になると考えられます。周囲の期待やうらやましさを過剰に意識し、責任を痛感するあまりプレッシャーを感じてしまうのが原因の一つと考えられます。無遅刻、無欠勤、残業もいとわず、こつこつ働いてきた努力型の人がかかりやすいといわれます。
 中年から初老期にかけては、年齢とともに「変化に弱くなる」一面があり、昇進して地位と給料は上がることになりますが、中間管理職として部下への指導力が問われ、業務内容と責任の重さに重圧を感じ、不適応状態に陥ります。
 うつ病の初期症状として、不眠、おっくう、つらさ(負担感・困難感)、朝が特につらいなどがあげられます。最初、何となく活発さや覇気がなくなり、無気力や怠慢に傾くなどの人格変化がみられることがあります。
 最近、このような職場のメンタルヘルスを管理する意味から、社内で産業医やカウンセラーや嘱託の精神科医に相談できる体制ができている企業が多くなっています。しかし、精神科医やカウンセラーのところへ自ら進んで行く者は皆無に近いのが現状です。これは専門医がいくら「プライバシーは守られる」といっても、相談する者が守られないかもしれないと思ってしまうからです。例えば、人事課担当の上司がカウンセラーに「彼の状態は今の仕事を継続できますか、彼は人事異動に耐えられますか」という問いがあった時、カウンセラーはカウンセリングを受けている人のためにということで、その人の状態を話さざるをえない立場においこまれます。
 どうしても会社に知られたくなくて社内の産業医やカウンセラーに相談するのに抵抗がある場合には、信頼できる病院やクリニックの精神科を訪ねてカウンセリングを受けることが望まれます。
 軽症のうつ病に対して抗うつ薬はよく効くといわれます。初期症状がみられた時点で早めに治療を受けることが大切です。

   



◎燃えつき症候群昇(働く人の心の病い5)


 これまで全速力で走ってきた、いわゆるモーレツタイプの人が、突然、燃えつきたように仕事への意欲を失ってしまう状態をいいます。自分の思い描いてきた理想と現実のあまりに大きなギャップに気づくことが原因の一つとしてあげられます。最近は女性の職場への進出がめざましくなっており、男性並にハードな仕事をこなすキャリアウーマンにとって男性社会の壁に突き当たったときなど大きなストレスとなります。また、仕事と家事や育児一切を完璧にやってきた女性にとって子供の自立と共に身も心も疲れ切って無気力感におそわれ、仕事も家事も手につかなくなることもあります。職場不適応というよりむしろ、めまぐるしい出来事や環境の変化に懸命に適応しようとして努力し疲れ切ってしまう傾向があります。
 精神症状として、抑うつ、無感動、無力感、意欲や理想の喪失などがみられます。身体症状として、体重減少、不眠、全身倦怠感、食欲不振、息切れなどがあらわれます。
 「燃えつき」に陥りやすい人は、仕事熱心で責任感が強く献身的であるが、一方で人に仕事を任すことができなく、柔軟性に欠けるといった特徴があります。また、人からの評価を極度に気にし、他人からの無視に耐え難いタイプに多いと判断されます。このような性格の特徴は妥協を好み、人や組織に忠誠をつくすといった典型的なうつ病の性格とはかなり異なっています。
 中年サラリーマンは「燃えつき症候群」に陥るのが当然と思われるほど多忙な環境に身をおかれています。それに陥ってしまうか、意欲をもって生き生きと生活できていくかは、その人の対処行動やその人を取り巻く支持・支援態勢がしっかりしているかどうかにかかっています。
 「燃えつき」にならないためには、以下のことに注意することが大切です。

@退職後もつきあっていける気ごころ知れた職場外での友人をもつこと。
A個人的な気持ちや秘密を打ち明けることのできる人を見つけておく。
B問題の原因、解決のため、当事者や関係者と話し合ってみる。
C愚痴をこぼしあったり、旅行に出かけたり、ボランティアに参加したりする。
D趣味、娯楽、運動、スポーツなどにより気分転換をはかる。
E家庭がやすらげる憩いの場所であれば理想的である。
F普段から物事の明るい面をみるように努めてプラス思考で気楽な生き方を心がける。

 

 ◎うつ病と不眠症  (働く人の心の病い6)

 

 不眠を訴えて医療機関を受診する人の約20〜30%はうつ病によるものと考えられます。また、うつ病者の約70%の人が不眠症で睡眠薬が投与されていることがわかっています。
 うつ病のなかには、不眠が主症状で、その他の精神症状や身体症状が目立たない場合が少なくありません。この場合、単に不眠症と診断されて、睡眠薬のみが投与される危険性があります。このような場合にはうつ状態が悪化し自殺などの不幸を招かないよう、不眠症の診断にあたっては常にうつ病を念頭におくことが必要です。
 比較的軽症のうつ病(仮面うつ病)では抑うつ気分など精神症状が自覚されないまま、身体症状が前面にでることが多いため、多くの患者さんが他の診療科を受診することが多いと思われます。うつ病にみられる身体症状は1)不眠症、2)食欲減退や胃腸症状、3)自律神経症状、4)全身倦怠感、5)頭痛、6)めまいなどがあげられます。これらの軽度のうつ病の身体症状は比較的速やかに改善すると考えられています。
 しかし、重いうつ病による不眠症は、深夜や早朝に目が覚めて眠れなくなります。その時、ゆううつな気分、自責的な考え、後悔の念にかられたり、悲観的な思いがおそってきて、一層のこと死んでしまいたいと思うことがあります。朝の目覚めが悪く、疲労感が残り、朝は大変起きづらく、また苦しい1日が始まるのかといった日々が続きます。午前中、苦しい思いが続き、午後から夕方にかけて、少し楽になる傾向がみられます。
 うつ病者にみられる自殺の考えは、眠れない時、特に早朝に目が覚めた時、苦痛を感じ一人でいる時に突然出現します。そのような時間帯に自殺を試みることが多いため、自殺を予防する意味からも不眠症の治療は重要な意義があります。
 一般にうつ病が重度になると、不眠も著しくなりますが、薬物治療がよく効くと考えられています。うつ病の不眠症に用いられる薬剤は1)抗うつ薬、2)睡眠剤、3)抗不安薬が中心です。通常、うつ病の治療で、うつ状態の改善とともに不眠症は改善されるものです。十分な睡眠が得られない場合には眠る前に抗うつ薬と睡眠薬を併用するとより効果的です。