パニック障害

 


◎最近、注目されるパニック障害とは?

外出できない!        乗り物に乗れない!
突然訪れる死の恐怖!    不安の繰り返し!

 

【症状】35歳の主婦Aさんは、3年前、夜自宅でくつろいでいて突然、心臓のドキドキ、息苦しさ、手のしびれが出現し、さらに全身がふるえ、死ぬかもしれない、発作がまた起こるのではないかという強い不安に襲われました。あちこちの病院を転々とし検査を受けましたが身体的には異常がありません。自律神経失調症と言われ、安定剤の投与を受けていましたがなかなかよくなりません。救急外来からの紹介で初めて精神神経科を受診しました。
 パニック障害は、突然、何ら原因もなく、不安が発作的におこり、これを繰り返す特徴があります。体の異常を感じ、死の恐怖、自分を制御できなくなるという恐怖、本来の自分でないような非現実感などの発作が出現します。以前は心臓神経症、過呼吸症候群、自立神経失調症、不安神経症として扱われていました。米国の資料によると、20〜40歳代の女性に多く、男性の2倍程です。この病気は精神疾患の中では、うつ病に並んで高い頻度で出現し、100人のうち1.5〜2人にみられます。
 心臓系の症状として、急に心臓がドキドキし、胸が痛い、胸がしめつけられる、脈が早くなる、呼吸器系の症状では呼吸困難、息苦しい、窒息する感じ、消化器症状として、物が飲み込みにくい、吐き気がする、下痢など、神経系の症状ではめまい、ふらつき、ふるえ、しびれ感などがあります。その他、異常に汗がでる、体のほてりや冷えなど多彩な症状が出現します。この病気は発作だけにとどまらず、発作がまた、起こるのではという不安から、一人で外出できない、電車や車に乗れないといった“空間恐怖”が60%の確率で現れます。治療が遅れるとうつ病になることがあり、治りにくくなると言われています。また、不安や恐怖感から逃れるため、お酒でまぎらわせているうちにアルコ−ル依存症になることも少なくありません。適切な早期治療がなされれば必ずよくなります。

パニック障害の自己診断チェックリスト
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1.突然前触れもなく強い不安に襲われ、発作
を繰り返す、また起こるのではという不安

2.以下のうち4項目以上の症状が出現する
(1)心臓がドキドキする
(2)汗があふれでる
(3)手足や体のふるえ
(4)息切れ、息苦しさ、ハーハー息をする
(5)息がつまる、窒息する
(6)胸(心臓)が痛い、苦しい、圧迫される
(7)吐き気、腹部の不快感
(8)めまい、ふらつき
(9)現実でない感じ、自分でない感じ
(10)気が変になるのではないかという恐怖
(11)死の恐怖
(12)手足や体のしびれやうずき
(13)体の冷感または熱感
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◎最近注目されるパニック障害が起こる原因

       コーヒーや喫煙も誘因に!       家族内発生率が高い!
  パニック障害の発現はストレスや日常の切実な出来事と関係があると言われていますが、発作そのものは何らの誘因や状況因がなく、予期せぬ時に、突然、体の症状が不安発作とともに生じ、これを反復するのが特徴です。
 患者の多くは元来、明るく社交的で仕事熱心な人で、まじめで良心的で人当たりがよく、癖のないごく普通の人柄であるような印象があります。一方で、神経質、情緒不安定で、内向的な性格が多いという報告もあります。
小児期に親との死別体験や生き別れ体験をもつものや親から分離することに極度の不安を抱いた人は成人になってからパニック障害になりやすいと言われています。
 家族研究によると、この病気の2人に1人が家族の者にも同じ病気にかかっていることから遺伝素因も指摘されております。また、パニック障害の家族にうつ病、アルコール依存症、恐怖症の患者が多いことからそれぞれ密接な関係があり、同じ遺伝的素質の表現型の違いに過ぎないとも言われています。
 脳の神経学的には神経細胞が集まっている脳内の青斑核(せいはんかく)とよばれる部分が健常な人に比べ過敏な状態になっているため、身体発作や不安発作が起こるのではないかと考えられています。ノルアドレナリン、セロトニン、ギャバ、アデノシンといった神経伝達物質に異常が存在する可能性が指摘されています。これは抗うつ剤や抗不安剤がよく効くことからも裏づけされます。
 パニック発作が起こりやすい物質で一番よく知られているものは乳酸です。不安発作が出現する人は運動後の乳酸が極度に増加することがわかっています。このような人は、運動そのものでも発作が起こり得ます。また、カフェイン、煙草のニコチン、炭酸ガス、過労、換気の悪い場所などが発作を起こす誘因になりやすいと言われています。カフェインはコーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートや清涼飲料水などに含まれています。これらの誘発物質の摂取はなるべく制限したほうがよいと思われます。



◎最近注目されるパニック障害の治療法

        早めに薬物治療を!


暴露療法、行動療法、認知療法も効果的!


  パニック障害には抗うつ剤(イミプラミン)や抗不安剤(アルプラゾラム)の薬がよく効き安全かつ手軽に行える治療法です。抑うつ症状がなくても抗うつ剤が有効です。発作や不安や恐怖感を鎮めることができます。しかし、薬だけでは十分な効果の得られない患者さんもみられます。このような患者さんにはさまざまな補助的な治療法を用います。発作が消失したあとの空間恐怖(ある場所や状況にいることの不安や恐怖)や予期不安(また発作が起こるのではと心配する)をなくす方法については薬を併用しながら不安を引き起こすような状況に患者さんが慣れてもらうようにする暴露療法があります。その状況にさらされることに少しずつ慣れていき、本当は危険がないことを自らを学習させるのです。そうすると不安は少しずつ軽減していきます。
  また、徐々に不安が起こる状況や恐怖に慣れるように段階的なプログラムを実行することでしだいに自信を取り戻していく行動療法があります。苦痛が最も少ないものから最強のものまで順位をつけて、容易な段階から次第に程度を上げていき、最終的にはそれまで強く避けていた場面や状況にも恐れることなく入って行けるように持っていきます。
 さらに、パニック障害の患者の多くは、例えば、ちょっとした動悸や痛みを発作の前触れと思い込み、そのため不安を呼び起こし、その不安がまた動悸をはじめとした発作を一層強めるといった悪循環に陥ります。認知療法はそのような患者と恐怖を結び付けていると思われる持続的な思考習慣を明らかにし、否定的な思考内容を肯定的に変えていこうとする方法です。その他、精神療法やカウンセリングや弛緩訓練法や自律訓練法が効果的です。
  パニック障害は発作が繰り返されることにより、また発作が起こるのではないかという恐怖感や不安がつのり、外出や買い物ができなくなり日常生活に大きな支障が出てきます。アルコールに依存したり、うつ病につながることにより治療が長引くこともあります。パニック障害と診断されるまでに数ケ所以上の病院を転々とする患者も珍しくありません。早期治療のためには、病気に対する正しい認識を高めることが重要です。