不安障害について

◎強迫神経症について


強迫神経症とは自分にとって無意味であることがわかっていても、ある考え(強迫観念)や行動(強迫行為)が反復して、考えまい、気にすまい、行うまいと努力するにもかかわらず、それをやめると著しい不安が生じるため、そのことにとらわれて悩んでいる状態を示します。患者は何をしようとしても、それで正しいのか、完全なのかといった疑惑が生じ、また初めからやり直さざるを得ない状態に悩み苦しみます。
  たとえば、ガスの元栓や戸締まりが気になり確かめたくなる(確認強迫)、また、手洗いを繰り返したり、入浴に時間をかける、洗濯を繰り返す、方向や歩数を気にして、実際に確認の行為を儀式的に繰り返す(強迫行為)などがあります。また、何か悪いことをしてしまうのではないかとか、自分の子どもを殺してしまうのではないか(加害観念)などの症状で悩みます。さらに握手で感染する、汚い物や細菌が口に入ってくる、身体に何か汚い物がついているといった強度な強迫観念や恐怖症に発展することもあります。
  このような状態は思春期から青年期にかけて発病することが多く、10〜40歳までの発症が81%を占めるといわれています。中には、老人の発症やすでに小児期に一過性の強迫症状がみられることも少なくありません。この病気は一般人口の約2%にみられます。
 発症要因として近親者の死別や離別体験、異性関係の問題、学業成績の低下、受験の失敗などの人生上の挫折、家族間の葛藤や経済状態の悪化など家庭内の問題、あるいは疲労、身体病、妊娠、分娩などの身体条件などがあげられます。
  病前性格としては几帳面、完全主義、仕事への過度の献身、細かい事への因われ、倹約家、強情、わがまま、融通がきかない、義務観念が強い、感情を抑制する傾向、知性化傾向、過度に良心的といった特徴があります。
  強迫性障害の薬物治療としては強迫の本態はセロトニンの調節障害と考えられており、クロミプラミンやトラゾドンなどといった抗うつ剤でセロトニンの神経伝達の是正化がなされるといわれています。状態に応じてクロミプラミンの点滴療法も効果的です。不安や焦りが強い場合は抗不安薬や抗精神病薬の併用が有効となります。最近の調査によると2/3以上が治癒するといわれています。薬物療法の進歩とともに改善率はさらに向上しつつあると考えられています。
  精神療法やカウンセリングとしては患者の訴えをよく聞き、治癒しうる病気であることを伝える必要があります。決して、「気のせい」「考えすぎ」「そんな馬鹿なことはありえない」などと一笑に付したりしないことです。強迫状態というものは自分の内部から意志に反して現れるものです。周囲の者は強迫症状の特徴を理解し、患者の不安に対して自分は大丈夫であると自らを信頼するようにと保証を与えることが重要です。さらに、患者が自分の強迫的諸特徴や性格傾向などを自覚し、不安を自分の心の中にしまっておくことができ、それを自らやわらげられるようになり、自分で対処ができるように援助していくことが大切です。





◎恐怖症について

  恐怖症は一般に外部から自分に向かってくるものに対する不安と恐怖であり、強迫症状が自分の内部から意志に反してあらわれてくるものと区別されます。恐怖症の人は一般の人がそれほど恐がらないような対象や状況に対して、強い恐怖を感じて悩むものです。自分でも不合理だと思いながらも自分の意志に抗しがたく、その恐怖感を制御できない状態といえます。たとえば、なにか汚い物やばい菌がついているという不快感や恐怖感(不潔恐怖)があり、一日何回も手を洗うとか、洗濯、入浴に時間をかけるなどがみられます。また、性病、癌、心臓病などにかかるのではないかと心配する(疾病恐怖)、蜂やヘビなどの特定の動物を恐がる(動物恐怖)、尖ったものに対する恐怖(尖端恐怖)や乗り物に乗ることに不安や恐怖感がある(乗物恐怖)などがあります。これらは単一恐怖と呼ばれています。単一恐怖は最も多くみられる恐怖症です。米国の調査によると一般人口の5〜12%にみられます。さほど日常生活には支障はきたさないといわれています。
  また、人前で緊張し、赤面すること(赤面恐怖)や自分の目つきや鼻立ち、顔つきに異常を感じること(醜形恐怖)や人の視線を感じて悩むこと(視線恐怖)などの対人恐怖があります。これらは社会的恐怖としてまとめられます。社会恐怖は単一恐怖ほど多くはないと考えられています。しかし、苦痛はかなり著しいため、精神神経科を受診することが多いようです。社会恐怖は15〜20歳に発症することが多く、治療を放置するとうつ病やアルコール依存になりやすいといわれています。
  また、だたっぴろい広場やデパートのような人混みの中にいることに不安や恐怖を感じること(広場恐怖)やエレベーターや狭い部屋や場所にいることに不安や恐怖を抱くこと(閉所恐怖)やビルなどの高いところが恐くて避ける(高所恐怖)などの特定の場所や状況にいることに不安や恐怖を感じる場合を空間恐怖といいます。空間恐怖はパニック発作(自律神経の発作症状)のある人が多くかかります。発作があった場所や状況を避けるようになります。この状態が長く続くことにより日常生活に支障がでてきます。また、空間恐怖の患者の多くはうつ病の原因にもなる離別・死別体験をもつことが多いと指摘されています。また、本人にうつ病のエピソードがあったり、家族にうつ病の人が多いといわれています。
  治療としては薬物療法(抗不安薬、抗うつ薬)や暴露療法(恐怖を抱く場面に徐々に慣れていけるように段階的に治療を進めていく方法)や認知行動療法(患者と恐怖を結びつけている持続的な否定的な考えを肯定的なものに変えていこうとする方法)の併用によりかなりよくなります。