オペレッタCDの推薦盤

<深入編



オペレッタと、とことんつきあってやる、という気になっていただけたなら、
とことんまで深入りしていただきましょう。
まずは、オペレッタの元祖オッフェンバックとスッペをはじめ、
フレンチ・オペレッタ(オペラ・コミーク)やベルリン・オペレッタ、
さらにはアメリカン・ミュージカルへと広げてみましょう。


なお、“あらすじ”は未完です。人物が入り乱れていて、まとめるのがけっこう面倒なのです。(^^ゞ

★★★ オペレッタを知るために先ず聴いていただきたい名盤です。
★★   三ツ星をマスターし守備範囲を広めたいなら聴いてください。
★    オペレッタ・フリークになってしまったら聴いてください。

         新情報は @ Aをクリックしてください。

* * 近 道 * *
フランス(オペラ・コミーク)
ジャック・オッフェンバック (1819-1880) アドルフ・アダン (1803-1856)
シャルル・ルコック (1832-1918) ロベール・プランケット (1848-1903)
ルイ・ヴァルネー (1844-1908) エドモン・オードラン (1840-1901)
アンドレ・メサジュ (1853-1929) ルイ・ガンヌ (1862-1923)
アンリ・クリスティネ (1867-1941) レイナルド・アーン (1875-1947)
オーストリア・ドイツ(オペレッタ)
フランツ・フォン・スッペ (1819-1895) J.シュトラウスU世 (1825-1899)
カール・ミレッカー (1842-1899) カール・ツェラー (1842-1898)
オスカー・シュトラウス (1870-1954) フランツ・レハール (1870-1948)
エメリッヒ・カールマン (1882-1953) ハインリッヒ・ベルテ (1857-1924)
レオン・イエッセル (1871-1942) ラルフ・ベナツキー (1884-1957)
エドゥアルト・キュネッケ (1885-1953) ロベルト・シュトルツ (1880-1975)
パウル・リンケ (1866-1946) レオ・ファル(1873-1925)
オムニバス ハイライト
アメリカ(ミュージカル)
ジグムンド・ロンバーグ (1887-1951) ジェローム・カーン (1885-1945)
ジョージ・ガーシュウィン (1898-1937) レナード・バーンスタイン (1918-1990)
フレデリック・ロウ (1904-1988) リチャード・ロジャーズ (1902-1979)



ジャック・オッフェンバック「地獄のオルフェ(天国と地獄)」

初演:1858年10月21日 パリ・ブッフ・パリジャン座

台本:エクトル=ジョナサン・クレミュー&リュドヴィク・アレヴィ


あらすじ:古代ギリシャと地獄
指揮:マルク・ミンコフスキ
リヨン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
神々の長ジュピテール:ローラン・ナウリ(Br)
狩猟の女神ディアヌ:ジェニファー・スミス(S)
愛の女神ヴェニュス:ヴェロニク・ジャンス(S)
地獄の支配者プリュトン:ジャン=ポール・フシェクール(T)
音楽教師オルフェ:ヤン・ブロン(T)
妻ウリディス:ナタリー・デッセー(S)
世論:エヴァ・ポドレス(A) etc.
Rec.1997.12 リヨン国立歌劇場
EMI CLASSICS 07243 5 56726 7 2(輸入盤)、To−EMIクラシックス TOCE55019/20(国内盤’99−3)2枚組
★★★
浅草オペラ以来、日本でも有名な「天国と地獄」です。このCDでは、1874年のゲテ劇場上演版ではなく、1858年のブッフ・パリジャン座での初演版(小編成による2幕版)を基本にしつつも、改訂版での追加曲も挿入しているそうです。初演盤ということで、序曲も、あのおなじみの有名な序曲ではありません。あの序曲は後に他人によって曲をつなぎ合わせて作られたものだからです。聴きなれた耳には、はじめはちょっと物足りなさを感じてしまいます。しかし、ささやかな導入の序曲(約3分)が終わり物語が始まるや、逆にあの有名な序曲は余計なものに思えてくるのです。しかも、小編成のオーケストラ(というより部分的にはバンドと言った方がよいくらいのサウンドにもなります)がいかにも小気味よく、しかもどんちゃん騒ぎの雰囲気を一層盛り上げていき、鮮明な録音がそれに拍車をかけます。古楽畑で活躍していたミンコフスキの指揮は、ガーディナー指揮の「メリー・ウィドウ」と同じくらい驚きであり、かつ杞憂であったことを知らされました。この小編成オケの小気味よいテンポには、むしろ古楽出身であることがプラスに働いているのかもしれません。そして彼の指揮のもと、絶好調のナタリー・デッセーが驚くべき超絶技巧を何度も聴かせてくれます。

DVDも出ました。
演出:ローラン・ペリー
パイオニアLDC PIBC−2034(国内盤)

   →映像編

指揮:ヴィリー・マッテス
フィルハーモニア・フンガリカ、ケルン歌劇場合唱団
vn solo:エルヴィン・ラモル
神々の長ユピテル:ベンノ・クッシェ(Br)
狩猟の女神ディアーナ:グリット・ファン・ユーテン(S)
愛の女神ヴェヌス:カーリ・レヴァース(S)
地獄の支配者プルート:フェリー・グルーバー(T)
音楽教師オルフォイス:アドルフ・ダルラポッツァ(T)
妻オイリディケ:アンネリーゼ・ローテンベルガー(S)
世論:ギゼラ・リッツ(A)
ハンス・ステュクス:テオ・リンゲン etc.
Rec.1977.9 レックリングハウゼン・フェストシュピールハウス
EMI CLASSICS 7243 5 65384 2 9(輸入盤)、To−EMIクラシックス TOCE9558/9(国内盤’97−10)2枚組
★★
おなじみのヴィリー・マッテスによるドイツ語盤です。ドイツ語による違和感はありません。基本的には初演盤によっているそうですが、こちらはフルオーケストラで、あの有名な(後に付け加えられた)序曲も演奏されています。ミンコフスキ盤を聴いた直後にこの演奏を聴くと、ちょっと重く感じますが、しばらく聴き進むうちに、マッテスの世界に取り込まれていることに気づきます。やはり、さすがマッテス。語り上手は、ここでも健在です。アドルフ・ダルラポッツァとアンネリーゼ・ローテンベルガーのコンビはもちろん名唱を聞かせますが、それ以上に聞き逃せないのが次の2人。1人は言わずと知れたベンノ・クッシェ。第2幕でのオイリディケとの掛け合いなど、役者ぶりを見事に発揮しています。そしてもう1人は、地獄の支配者プルートの下男ハンス・ステュクス役のテオ・リンゲン。彼の歌(第2幕で歌われる「私がアルカディアの王子だった頃」)など、なんとも愉快です。まるでエノケンのような存在(キャラクター)なのでしょうね。

マッテス指揮によるドイツ語盤のオッフェンバック作品は、この他に「美しきエレーヌ」(1864年初演、写真左)、「パリの生活」(1866年初演、写真右)もあります。
   


ジャック・オッフェンバック「美しきエレーヌ

初演:1864年12月17日 パリ・ヴァリエテ座

台本:アンリ・メイヤック&リュドヴィク・アレヴィ

あらすじ:古代ギリシャのスパルタにて。
指揮:マルク・ミンコフスキ
Les Musiciens du Louvre-Grenoble,Choeur des Musiciens du Louvre
パリス:ヤン・ビューロン(T)
スパルタの王メラネス:ミシェル・セネシャル(T)
妻エレーヌ:フェリシティ・ロット(S)
アガメムノン:ローレント・ナオウリ(Br)
オレスト:マリーエンゲ・トドロヴィッチ(Ms)
カルカス:フランソワ・ル・ルー(Br) etc.
Rec.2000.9/10 パリ・シャトレ座ライヴ
Virgin CLASSICS 7243 5 45477 2 0(輸入盤)2枚組
★★
ミンコフスキの指揮は、上記「地獄のオルフェウス」同様、小気味よくも切れ味抜群のテンポでオッフェンバックの才気を何倍にもふくらませています。オッフェンバック演奏においては欠かせない指揮者になりましたね。ただし作品としては「地獄のオルフェウス」や「ジェロルスタン女大公殿下」に比べると、一等下がるといわざるを得ません。フェリシティ・ロットは、映像編で紹介しているクライバー指揮ウィーン・フィルによるリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」の元帥夫人でも、堪能編で紹介したフランツ・ヴェルザー=メスト指揮ロンドン・フィルによるレハール「メリー・ウィドウ」のハンナ・グラヴァリでも気品ある夫人を演じていましたが、この「美しきエレーヌ」でも深みのある声で「夫の名誉を守るのが妻のつとめ。でも夫を裏切らざるをえないのも妻の宿命」などと浮気心を歌われた日には、ウーン、そうかもしれないと、つい思ってしまったりして……。アブナイなあ。

DVDも出ました。
演出:ローラン・ペリー
TDK CORE TDBA−0024(国内盤)

   →
映像編



ジャック・オッフェンバック「ジェロルスタン女大公殿下」

初演:1867年4月12日 パリ・ヴァリエテ座

台本:アンリ・メイヤック&リュドヴィク・アレヴィ

あらすじ:架空の国ジェロルスタン大公国にて。
指揮:ミシェル・プラッソン
トゥールーズ市立管弦楽団・合唱団
女大公殿下:レジーヌ・クレスパン(S)
フリッツ:アラン・ヴァンゾー(T)
ポール殿下:シャルル・ビュルル(Bs)
ビュック男爵:クロード・メロニ(Br)
ブン大将:ロベール・マッサール(Br)
グロッグ男爵:フランソワ・ル(T)
ヴァンダ:マディ・メスプレ(S) etc.
Rec.1976.6 トゥールーズ
SONY CLASSICAL SM2K 62583(輸入盤)2枚組
★★★
浅草オペラでは「ブン大将」の名で親しまれてきた作品。花形スターだった田谷力三も、この作品の主役フリッツ役でデビューしました。ブン大将は清水金太郎が演じました。小林愛雄の訳詞による「大将閣下の名はブンブン」、「連隊の唄」(第1幕)、「大勝利の唄」(第2幕)などが人々を虜にしました。オリジナルで聴いても、この作品なかなか面白く、「地獄のオルフェ」よりも上出来(オッフェンバックの最高傑作と言ってもいいです)だと思います。当時のペラゴロたちが熱狂して聞きほれた気持ちがよくわかります。とにかく一度耳にするとつい口ずさみたくなるような曲(と小林愛雄の名訳)、それが人気の秘訣となったのでしょう。このCDの国内盤は1977年11月に初出されて以降は、再発売はされていません。フランスの名指揮者ミシェル・プラッソンのごく初期の録音ですが、演奏がまた充実しています。ブン大将役のロベール・マッサール、マリア・カラスの「カルメン」(プレートル盤)でエスカミーリョを歌っていましたが、そこではエスカミーリョとしてはちょっと“やわ”な感じがぬぐいきれませんでしたが、ここでのブン大将のコミカルさは、申し分ありません。もちろんフランスの名花レジーヌ・クレスパンのタイトルロールがこのCDの何よりの宝です。

指揮:ジャン=クロード・ハルトマン
オーケストラ&合唱団の名称記載なし
女大公殿下:Suzanne Lafaye(S)
フリッツ:Jean Aubert(T)
ポール殿下:Christian Asse(Bs)
ビュック男爵:Rene Terrasson(Br)
ブン大将:Henry Bedex(Br)
グロッグ男爵:Marcel Robert(T)
ヴァンダ:Michele Raynaud(S) etc.
Rec.1966?
ACCORD 465 871−2(輸入盤)2枚組
★★★
オッフェンバックの最高傑作と信じるこの作品は、上記のミシェル・プラッソン盤がイチ押しの名盤ですが、このHARTEMANN盤もなかなか捨てがたい魅力があります。名称の記載がなく、どういう団体か不明ですが、オーケストラがかなり小規模なのです。小規模が魅力? そうです。つまりオケの小規模の響きからオペレッタのひとつのあり方が実感できるからなのです。小さな劇場で小規模のメンバーによって演奏されるオペレッタの、身近な距離にあって、ある種の猥雑さを感じさせるところが、オペレッタならではの魅力でもあるのです。ちょうど大須オペラのように(そしておそらく浅草オペラのように)。とりわけこの「ブン大将」という作品においては、こうした雰囲気が欠かせません。そういう点で、このHARTEMANN盤は、プラッソン盤とは異なる方法で「ブン大将」の魅力を表出しています。もっともオケも歌手も技術はしっかりしていますから、決してレベルの低い演奏でないことは明言しておきます。音質もSTEREOでまずまず良好です。

指揮:ルネ・レイボヴィッツ
Orchestre de l'Association des Concerts Pasdeloup,The Paris Lyric Chorus
女大公殿下:Eugenia Zareska(MS)
フリッツ:Andre Dran(T)
ポール殿下:Jean Mollien(T)
ビュック男爵:George Lacour(Br)
ブン大将:John Riley(Bs)
グロッグ男爵:Georges Thery(Br)
ヴァンダ:Gisele Prevet(S) etc.
Rec.1958
PREISER RECORD 90591(輸入盤)2枚組
★★★
上記ハルトマン盤よりさらに古い1958年の録音、しかしれっきとしたステレオ盤、おまけに指揮がルネ・レイボヴィッツとくれば、これはもう見逃せません。フル・オーケストラによる堂々たる、しかも味わいある演奏で、プラッソン盤に比肩する出来栄えです。音質もプラッソン盤に比べれば確かにややくもりがちなところもありますが、鑑賞には全く問題のない水準のステレオと言えます。ベートーヴェンの交響曲で1960年代の録音としては信じられないほどスタイリッシュな録音を残したレイボヴィッツですが、オッフェンバックでも、軽快な愉悦を紡ぎだしています。歌手たちも万全の出来です。


「Carlos Kleiber in Light Music」
  ジャック・オッフェンバック「Die kleine Zauberflote」(小さな魔笛)
  
ジャック・オッフェンバック「Die Verlobung bei der Laterne」(提灯結婚あるいは街灯の下の結婚)
   (1枚目にこのオペレッタ2作品が、2枚目にはニコライやシュトラウスの序曲やワルツ、ポルカを6曲収録)

初演:小さな魔笛:?
    提灯結婚:1857年10月10日 ブッフ・パリジャン座

台本:小さな魔笛:?
    提灯結婚:ミシェル・カレ&レオン・バチュ

あらすじ:?
指揮:カルロス・クライバー
デュッセルドルフ・ライン・オペラハウス・オーケストラ
S:Gabriele Treskow,Eva Kaspar,Ditha Sommer
Ms:Erika Wien
T:Karl Diekmann,Kurt Gester
Br:Alfons Holte
Rec.1963(1枚目)、1966(2枚目) MONO
Golden Melodram GM4.0051(輸入盤)2枚組

日本オペレッタ協会のHP内<こんなソフト見つけた>で柴山三明氏がこのCDを紹介しています。オッフェンバックの珍しいオペレッタ2作品を、33歳のカルロス・クライバーが指揮したものです。1954年にポツダムでオペレッタを指揮してデビューしたカルロスは、1956年からデュッセルドルフ・ライン・ドイツ歌劇場の指揮者に就任し、1964年にチューリッヒ歌劇場に移ります(ONTOMO MOOK『指揮者のすべて』音楽之友社[1996年5月] による)。ということは、この1枚目のCDは、デュッセルドルフ時代の最後の時期の記録ということになります。いずれも complete と表示されており、「Die kleine Zauberflote」は約33分、「Die Verlobung bei der Laterne」は約23分の、いずれも小品です。音楽的には両曲とも舞台でみるとさぞや楽しいのでしょうが(笑い声と拍手が時々聞こえます)、音だけだと、すでに取り上げたオッフェンバックの諸作品と比べてもやはり聞き劣りすると言うしかありません。まあ、このCDは作品よりクライバーで買うといったものでしょうが。また2枚目には続くチューリッヒ時代(1966年まで)の最後の記録として、ニコライ「ウィンザーの陽気な女房」序曲、ヨハン・シュトラウス「ジプシー男爵」序曲、ヨゼフ・シュトラウスのワルツ「オーストリアの村つばめ」、「天体の音楽」、ポルカ「かじやのポルカ」、「騎手」の6曲を収録しています。いずれもカルロスの個性はすでに実感できます。あおるようなドライブ感、小気味よいテンポとはっとするデフォルメ。モノラルですが良好な音質。拍手ありのライブ録音です。


アドルフ・アダン「ロンジェモーの馭者」

初演:1836年10月13日 Salle de la Bourse

台本:Adolphe de Leuven & Leon Levy Brunswick

あらすじ:
指揮:Thomas Fulton
モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団、Ensemble Choral Jean Laforge
Chapelou/Saint-Phar:John Aler
Le Marquis de Corcy:Francois Le Roux
Biju/Alcindor:Jean-Philippe Lafont
Madeleine/Madame de Latour:June Anderson
Bourdon:Daniel Ottewaere
Rose:Balvina de Courcelles etc.
Rec.1985.9 Salle Garnier
EMI 7243 5 74106 2 5(輸入盤)2枚組

アドルフ・アダン(1803−1856)は、バレエ「ジゼル」で有名ですがオペラ作品は1849年作の「闘牛士」が知られるくらいでしょうか。 オペラ作家としてのアダンというイメージは現代の日本では希薄ですが、この作品は、関東大震災によって壊滅する直前の1923(大正12)年7月24日から浅草・金竜館で根岸大歌劇団によって取り上げられています。オッフェンバック登場以前のオペラ・コミークで、音楽的には特に耳をひきつけるわけではありませんが、仏オペレッタ・シリーズの1枚としてリリースされましたし、浅草オペラでも取り上げられた作品なので、ここでも紹介しておきます。


シャルル・ルコック「マダム・アンゴの娘」

初演:1872年12月4日 ブリュッセル・ファンタジー=パリジェンヌ劇場

台本:クレールヴィユ、ポール・シロダン&ヴィクトル・コーニング

あらすじ:18世紀末のパリにて。
指揮:Jean Doussard
パリ・オペラ・コミーク座管弦楽団、パリ・オペラ座合唱団
クレレット・アンゴ:マディ・メスプレ(S)
ポンポネ:シャルル・ブルレス(T)
ランジュ:嬢:クリスティアン・ストゥッツ(S)
アンジェ・ピトゥー:ベルナルド・シンクレア(Br) etc.
Rec.1972.6 パリ・ワグラム・サル
EMI 7243 5 74082 2 6(輸入盤)2枚組→上、EMI CDM7691352(輸入盤)ハイライト盤→下

この作品も浅草オペラではおなじみの作品です。シャルル・ルコック(1832−1918)は、オッフェンバック・オペレッタ・コンクールでビゼーと優勝を分け合った人物で、なかでもこの作品は大成功したものだそうです。確かに音楽的には、ビゼーを彷彿とさせる雰囲気を持っています。第2幕の最後で見せかけの結婚式をする場面での、Waitz “Turnez,Turnez!Qua la la valse on se livre! (廻れ廻れ、ワルツが始まるぞ)”が、音楽としては1番の聞かせどころとなっています。


ロベール・プランケット「コルヌヴィユの鐘」

初演:1877年4月19日 パリ・フォリー・ドラマティック座

台本:M・M・クレールヴィユ&C・ガベー

あらすじ:ルイ14世時代のフランス・ノルマンディ地方
指揮:Jean Doussard
パリ・オペラ・コミーク座管弦楽団、パリ・オペラ座合唱団
ジェルメール:Mady Mesple
セルポレット:Christiane Stutzmann
アンリ・ド・コルヌヴィユ:Bernard Sinclair
グレニシュー:Charles Burles
ガスパール:Jean−Christophe Benoit etc.
Rec.1973.6 パリ・ワグラム・サル
EMI 7243 5 74091 2 4(輸入盤)2枚組

ロベール・プランケット(1848−1903)は、もとシャンソンの作曲家。この「コルヌヴィルの鐘」は、オッフェンバックの影響を強く反映した作品と言えるでしょう。日本人によって、1915(大正4)年3月に帝国劇場にて「古城の鐘」という題で上演されて以降、浅草オペラにおいても主要演目のひとつとなっていきます。中でも漁師グレニショーが登場する場面での「波をけり」(小林愛雄訳詞)は、田谷力三の十八番であったと言われます。


ルイ・ヴァルネー「女子修道院の中の近衛兵」

初演:1880年3月16日 ブッフ・パリジャン座

台本:ポール・フェリエ&ジュール・プレヴェル

あらすじ:ルイ13世時代のフランス・トゥレーヌ地方の修道院にて。
指揮:Edgard Doneux
Orchestre Symphonique de la RTBF,
Choeurs de la RTBF,Choeurs du Teatre Royal de la Monnaie
マリー:Mady Mesple
ルイーズ:Christiane Chateau
シモーヌ:Michele Command
近衛兵ブリサック:Michel Trempont
近衛兵ゴントラン:Charles Burles
ブリデン神父:Jules Bastin
ウルスラ女子修道院長:Guy Fontagnere
修道女オポルトゥーヌ:Claude Vierne etc.
Rec.1979 Studio 4 de la RTB
EMI 7243 5 74082 2 6(輸入盤)2枚組

ルイ・ヴァルネー(1844−1908)のこの作品も、オッフェンバックの影響を反映した作品です。神父に変装した近衛兵が女子修道院の中で女子学生達を誘惑し、最後のハッピーエンドまですったもんだが繰り広げられるという、オペラ・コミークらしい物語です。演奏は生きがよく楽しめますが、作品自体は、よく出来てはいるもののオッフェンバックの亜流の域は出ていないでしょう。


エドモン・オードラン「マスコット」

初演:1880年12月29日 ブッフ・パリジャン劇場

台本:アルフレッド・デュリュ&アンリ・シャルル・シヴォ

あらすじ:イタリアのピオンビーノ公国とピサ大公国にて。
指揮:ロベルト・ベネデッティ
オーケストラ&合唱団の名称記載なし
ベッティーナ:Genevieve Moizan
ピッポ:Robert Massard
ロッコ:Robert Destain
ロラン17世:Lucien Baroux
フィアメッタ:Denise Cauchard
フリテリーニ:Bernard Alvi etc.
Rec.1956?
ACCORD 465 877−2(輸入盤)2枚組 MONO

この作品も浅草オペラではおなじみの作品です。エドモン・オードラン(1840−1901)の代表作。マスコットとは、もともと“幸運の魔女”というような意味だそうで、このオペレッタは、マスコット伝説(悪魔がこの世にまいた不幸を刈り取るために、神がマスコットを送ったとする)を下敷きに、本人は知らないもののマスコットとして生まれたベッティーナをめぐる恋のお話です。舞台で見るとなかなかうまく出来た話で楽しいのでしょうが、音楽だけで聴くと、それほどの作品ではないと思います。音質もモノラルとしては聞きやすいですが、まあまあといったところでしょうか。


アンドレ・メサジュ「ヴェロニック」

初演:1898年12月10日 ブッフ・パリジャン劇場

台本:アルベール・ヴァンロー&ジョルジュ・デュヴァル

あらすじ:1840年頃のパリにて。
指揮:ピエール・デルヴォー
オーケストラ&合唱団の名称記載なし
コックナール:Marcel Carpentier
アガット:Genevieve Moizan
エレーヌ(ヴェロニック):Geori Boue
エルメランス:Mary Marquet
フロレスタン:Roger Bourdin etc.
Rec.1953?
ACCORD 465 864−2(輸入盤)2枚組 MONO
★★★
アンドレ・メサジュ(1853−1929)のオペラ・コミーク代表作と言うよりフランスの舞台音楽作品の傑作と言える「ヴェロニック」の、イチ押しの名盤です。モノラルですが、全く気にならない音質のうえに、それぞれの歌手が実に個性豊かに演じ、歌い上げていきます。台詞の部分までが、(フランス語がまったくわからないからこそ?)音楽の一部として耳に響いてきます。そしてなによりも全体を統率する名指揮者ピエール・デルヴォーの編みあげる生き生きとした音楽の流れ。ぜひ舞台を見てみたいと思わせる作品とその演奏です。唯一残念なのは、2枚目の一番最後がフェイドアウトして終わります。拍手を入れないための処置なのか(ライヴ録音とも思えないのですが)、最後の最後に音質的な欠陥があったためか、理由はわかりませんが、明らかに演奏段階でのフェイドアウトではなく、技術的処置です。惜しいかな、玉に瑕です。

指揮:ジャン=クロード・ハルトマン
コンセール・ラムルー管弦楽団、ルネ・デュクロ合唱団
コックナール:ジャン・クリストフ・ベノワ(Br)
アガット:アンドレア・ギオー(S)
エレーヌ(ヴェロニック):マディ・メスペレ(S)
エルメランス:デニス・ベノワ(Ms)
フロレスタン:ミヒャエル・デンス(Br) etc.
Rec.1969.1 パリ・ワグラム・サル
EMI 7243 5 74073 2 3(輸入盤)2枚組、EMI CDM7691352(輸入盤)ハイライト盤
★★★
入門編で紹介したバーバラ・ヘンドリックスによる「Airs & duos d'operettes」で開眼させられた「ヴェロニック」。ヘンドリックスも歌っていた、第2幕でフロレスタンがエレーヌに愛をささやくワルツ“Duo de l'escarpolette:Ah! Mechante(押して、押して、ブランコを、ああ、意地悪……)”の気品あるメロディは、フランス語の響きと相俟って、聴く者の心まで溶かして何ともメロウな気分にしてくれます。このメロディは、ビゼーのオペラ「カルメン」第1幕でのミカエラとホセの二重唱と並ぶフレンチ・オペラの中でも最も美しいものです。この名曲がメスペレ、ベノワ、ギオーらの名歌手によって歌われるとき、もう幸せな気分に包まれてしまいます。

指揮:J・リン・トンプソン
オハイオ・ライト・オペラ
コックナール:(Br)
アガット:(S)
エレーヌ(ヴェロニック):(S)
エルメランス:(Ms)
フロレスタン:(Br) etc.
Rec.1998?
NEWPORT CLASSIC NPD85635/2(輸入盤)2枚組

英語版全曲です。言葉に曲をつける以上、原語が一番いいのは当然ですが、とりわけメサジュの音楽はフランス語を前提としたメロディなので、英語だといまひとつ香気を感じさせません。


アンドレ・メサジュ「フォルチュニオ」
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮リヨン国立歌劇場による1907年初演のコメディ・リリーク。台詞はなく、オペラと言ってもいい作品、20世紀フレンチ・オペラの傑作ひとつだと思います。このコンビに文句などあろうはずもありません。ERATO 2292−45983−2(輸入盤2枚組)
「ANTHOLOGIE」
メサジュのいろいろな作品から24曲のナンバー約69分を収録しています。音源・録音に関する情報が未記入ため詳細不明ですが、良質のモノラル録音で聴きやすいです。メロディ・メイカーとしてのメサジュの資質がよくわかります。(FORLANE 19191)


ルイ・ガンヌ「曲芸師たち」

初演:1899年12月30日 パリ・ゲテ座

台本:モーリス・オルドノー

あらすじ:1750年頃のヴェルサイユとノルマンディにて。
指揮:ピエール・デルヴォー
オーケストラ&合唱団の名称記載なし
士官アンドレ:Robert Massard
サーカス団長マリコルン:Marcel Carpentier
歌手シュザンヌ:Janine Micheau
マリオン:Genevieve Moizan
道化師パイヤース:Raymond Amade etc.
Rec.1956?
ACCORD 465 868−2(輸入盤)MONO
★★
ルイ・ガンヌ(1862−1923)の代表作。サーカスを舞台にした悲喜こもごもの生活を描いていて、楽しい仕上がりになっています。ワルツ調の曲がふんだんに用いられているのも、この作品の特徴のひとつで、何ともいえぬ至福をもたらしてくれます。メサジュの「ヴェロニック」と並ぶフランス・オペレッタ(正確にはオペラ・コミーク)の二大名作と言えるでしょう。そう、ウィンナ・オペレッタにおいて、スッペやヨハン・シュトラウスU世の“金の時代”に対し、レハールやカールマンを“銀の時代”と称するなら、フランスにおいては、第1世代のオッフェンバックに対して、メサジュとガンヌを第2世代として位置付け、高く評価したいです。ピエール・デルヴォーの指揮をはじめ、プラッソン盤のブン大将役だったロベール・マッサールなど、生き生きとした演奏を繰り広げています。適度に台詞をはさみながらの展開は、多少の省略はあるものの、名作の名演と言えるでしょう。なおジャケットにはSTEREOと表記されていますが、実際は良質のモノラル録音です。

指揮:ジャン=ピエール・マルティ
コンセール・ラムルー管弦楽団、ルネ・デュクロ合唱団
士官アンドレ:クロード・カレス(Br)
サーカス団長マリコルン:ジャン・クレストフ・ベノワ(Br)
歌手シュザンヌ:マディ・メスペレ(S)
マリオン:エリアーヌ・ラブリン(S)
道化師パイヤース:レイモンド・アマデ(T) etc.
Rec.1968.7 パリ・ワグラム・サル
EMI 7243 5 74079 2 2(輸入盤)2枚組、EMI CDM7691362(輸入盤)ハイライト盤
★★★
こちらは正真正銘ステレオ録音で、華やかなオーケストレーションが、より鮮明に実感できます。しかも上のデルヴォー盤がCD1枚約70分、多少の省略があるのに対し、この盤はCD2枚組で約103分の全曲収録のようです。演奏も申し分なしの愉悦に満ちたもの。フレンチ・オペラ・コミークの粋を存分に味わわせてくれます。


アンリ・クリスティネ「フィ=フィ」

初演:1918年11月11日 パリ・ブッフ・パリジャン座

台本:アルベール・ウィルメッツ&ファビアン・ソラー

あらすじ:紀元前600年のパリ風のアテネ
指揮:Edouard Bervilly
オーケストラ&合唱団の名称記載なし
彫刻家フィディアス(通称フィ・フィ):Max de Rieux
フィディアス夫人:Colette Riedinger
美少女アスパジ:Mireille
王子アルディメドン:Bernard Alvi
従僕ル・ピレ:Robert Destain
金持政治家ペリクレス:Pierre Heral etc.
Rec.?
ACCORD 465 886−2(輸入盤)2枚組 MONO
★★
アンリ・クリスティネ(1867−1941)の代表作。パリのブッフ・パリジャン座で1500夜連続上演という熱狂をもって受け入れられた作品だそうです。軽妙洒脱な作品が第一次世界大戦終結後の喜びを象徴するかのようなところから、歓迎されたのかもしれません。メサジュの後継的作品といった感じです。このCDではかなり小規模のオーケストラをバックに、楽しくも個性的な歌を繰り広げています。第2幕の終わり、フィディアス夫人と王子アルディメドンとの不倫場面で歌われるワルツ調の“Ah! tais-toi,tais-toi,tum'affoles!(ああ、黙っていたら貴方は私を狂わせる)”が一番の聴かせどころです。ただしCD2枚約100分収録のうち約45分が台詞で、フランス語がわかれば台詞も含めて本当に楽しめるのでしょうが、それが出来ない者にとっては、ちょっと台詞が多すぎます。まあ、CDプレーヤーで音楽部分だけプログラミングすればいいのですが。むしろ台詞まできちっと入れていることの方を評価すべきでしょうか。音質良好なモノラル録音です。


レイナルド・アーン「シブレット」

初演:1923年4月7日 パリ・ヴァリエテ座

台本:ロベール・ド・フレール&フランシス・ド・クロワゼ

あらすじ:1867年頃のパリおよび近郊にて。
指揮:シリル・ディーデリッヒ
モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団、
ジャン・ラフォージュ合唱団
シブレット:マディ・メスペレ(S)
デュパルケ:ジョセ・ヴァン・ダム(Br)
アントナン:ニコライ・ゲッダ(T)
ゼノビー:コレット・アリオット・ルガス(S)
ロジェ:フランソワ・ル・ルー(Br) etc.
Rec.1981/1982 モンテ・カルロ・ガルニエ・サル
EMI CLASSICS 7243 5 66159 2 2(輸入盤)2枚組
★★
マスネに師事したレイナルド・アーン(1875−1947)のオペレッタでは唯一の成功作にして代表作とされる作品。音楽的にはメサジュやガンヌの雰囲気を継いでいると言えます。第2幕でデュパルケとシブレットのデュオで歌われる“Nous avons fait un beau voyage(私たちは素敵な旅をした)”は、一度聞いたらもう、すっかり虜となってしまうメロディです。若い貴族アントナンと田舎娘シブレットとがすれ違いながらも最後は結ばれるというお決まりの話ですが、キューピット役となる中央市場の総監督デュパルケ(CDでは何とジョセ・ヴァン・ダムが歌っています!)が、実はプッチーニのオペラ「ボエーム」でミミを失った後の、年老いたロドルフォという設定には驚きです。ストーリーとは直接関わりない、ちょっとした茶目っ気も、オペレッタならではの、嬉しい遊びです。


フランツ・フォン・スッペ「美しきガラテア」

初演:1865年6月30日 ベルリン・マイゼル劇場

台本:ポリィ・ヘンリオン

あらすじ:伝説の時代
指揮:トーマス・アイトラー
ライン・フィルハーモニー管弦楽団、コブレンツ市劇場合唱団
ガラテア:アンドレア・ボクナー(S)
ピグマリオン:ハンス=ユエルク・リッケンバッハー(T)
ガニメート:ユリアーネ・ハイン(S)
ミダス:ミヒャエル・クプファー(Br) etc.
Rec.2000.2/3
cpo 999 726−2(輸入盤)

1865年第1稿による演奏。といっても比較できる全曲盤が他に無いので、第1稿の特色についても言及できません。ウィーン・オペレッタ黄金時代の幕開けとなる作品とされています。前年の1864年に初演されたオッフェンバックのオペレッタ「美しきエレーヌ」に便乗して作曲された1幕物で、このCDでは約49分です。確かにオッフェンバックの影響が強く感じられる音作りとなっています。この自らの作り上げた彫像に次第に心惹かれていくピグマリオンの話が、ミュージカル「マイ・フェア・レディ」のもとにもなったそうです。これまで序曲のみが録音されていた、名ばかり有名で実体の知られざる作品だけに、この録音は嬉しい限りです。


フランツ・フォン・スッペ「ボッカッチョ」

初演:1879年2月1日 ウィーン・カール劇場

台本:リヒャルト・ジュネ&フリードリッヒ・ツェル

あらすじ:14世紀のフィレンツェにて。
<第1幕>フィレンツェ守護聖人ヨハネの祭日の日の事。夫スカルツァが仕事で旅に出ている隙に、ベアトリーチェは学生レオネットと逢引きをしている。そこへボッカッチョもちょっかいをかけにやって来た。ところが妻が恋しいあまりにスカルツァが予定をきりあげて帰ってきてしまったのだ。あわてたベアトリーチェは一計を案じ、助けを求めながら部屋から飛び出してくる。そして男が突然家に入ってきたかと思うともう1人が追いかけてきて決闘をし始めた、と叫ぶのだ。すると二人の男が争いながら家から出てくる。驚いたスカルツァは妻をかばいながら家に避難していく。それを確認して大笑いするのはレオネットとボッカッチョ。一方雑貨屋ランベルトゥッチョとペロネラ夫婦の養女フィアメッタは、養育費を送ってきている者から結婚話を持ちかけられているが、会ったことも無い人との結婚には気が進まない。むしろ教会でしばしば会う人に魅かれている。もう1人の主人公であるパレルモの王子ピエトロも、政略結婚を迫られているのだが、それよりボッカッチョのような自由奔放な恋にあこがれている。そこで素性を隠して彼のもとに弟子入りするが、ボッカッチョからレオネットにたらい回しされる。そしてレオネットからイザベラという人妻を教えられ、早速逢引きの約束をとりつけてしまう。そんなピエトロのことを女たらしのボッカッチョと勘違いしてしまった男どもにより、彼はさんざんに暴行を受けてしまうのであった。
<第2幕>ボッカッチョ、レオネット、ピエトロの3人は、それぞれにお目当ての女性に恋文を出す。ボッカッチョは、今はフィアメッタをねらっている。そして、それぞれの亭主や養父の目を盗みながらも、3組の男女は、それぞれ、しばしのアバンチュールを楽しんでいる。その時、ベアトリーチェの旦那スカルツァが、ボッカッチョがやって来たと言うので男どもは集まってくる。そして引っ張り出された男をさんざんに打ちのめす。ところがフィアメッタの養父であるランベルトゥッチョが、この男はボッカッチョではなく、フィアメッタのために養育費を送ってくれている人であることに気付く。彼はフィアメッタを連れにやって来たのだった。平身低頭にあやまる男ども。フィアメッタは、見知らぬ人との結婚に全く気が進まないが、仕方なく連れて行かれるのであった。その隙に逃げ出すボッカッチョたち。
<第3幕>宮廷に呼び出されたランベルトゥッチョ夫婦は、フィアメッタが実は大公の隠し子であったこと、そしてこの度ピエトロ王子との結婚に至ったことを知らされる。愛のない政略結婚をさせられるピエトロ王子とフィアメッタ、その彼女と相思相愛のボッカッチョは、周りの人々の欺瞞をあばくことで、結局納まるところに納まってめでたしめでたし、とくればオペレッタお決まりの筋。
指揮:ヴィリー・ボスコフスキー
バイエルン交響楽団、バイエルン国立歌劇場合唱団
ボッカッチョ:ヘルマン・プライ(Br)
ピエトロ:ヴィリー・ブロクマイアー(T)
レオネット:ヴァルター・ベリー(Br)
フィアメッタ:アンネリーゼ・ローテンベルガー(S) etc.
Rec.1974.10/11 ミュンヘン
EMI CLASSICS 7243 5 66179 2 6(輸入盤)、To−EMIクラシックス TOCE9556/7(国内盤’97−10)
2枚組
★★
浅草オペラで最も数多く上演された作品です。ベアトりーチェを「ベアトリ姐ちゃん」と訳した東大英文科出身の鬼才小林愛雄(ちかお)は、フィアメッタによって歌われる「Hab’ich nur deine Liebe(貴方が愛して下さるなら)」を「恋はやさしい野辺の花よ」という名訳にしました。さて、このCDは、とにかくレコードならではの豪華キャストに唖然。演奏としては一級品。でも作品としては、ワルツもあり実に楽しく仕上がっていますが、音楽に陶酔できるほどの甘い艶やかさは、スッペには感じられません(スッペに銀の時代の魅力を期待すること自体が間違っているまですが)。スッペはウィンナ・オペレッタというよりは、ニコライの歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」(1849)の系譜に連なるドイツ・ロマン派ジングシュピールのような気がします。もちろん音楽としての語りのうまさは、オッフェンバックと張り合っただけあって抜群です。


ヨハン・シュトラウスU世「ヴェネツィアの一夜」

初演:1883年10月3日 ベルリン・フリードリッヒ・ヴィルヘルムシュタット劇場

台本:フリードリッヒ・ツェル&リヒャルト・ジュネ

あらすじ:18世紀中ごろのヴェネツィアにて。
指揮:オットー・アッカーマン
フィルハーモニア管弦楽団、合唱団
アンニーナ:エリーザベト・シュヴァルツコップ(S)
ヘルツォーク侯爵:ニコライ・ゲッダ(T)
チボレッタ:エミー・ローセ(S)
カラメッロ:エーリッヒ・クンツ(T)
バルトロメオ・デラックア:カール・デンヒ(Br) etc.
Rec.1954.5 ロンドン・キングズウェイホール
EMI CDH 7 69503 2(輸入盤)MONO
*To−EMIクラシックスより「ウィーン気質」と2枚組で出ました。
★★
このCDは1923年10月25日、アン・デア・ウィーン劇場で復活上演されたエーリッヒ・コルンゴルト編曲版によっています。早崎隆志『コルンゴルトとその時代−“現代”に翻弄された天才作曲家−』(みすず書房,1998年3月)によると、「シリアスなオペラの世界でのゴタゴタにやや疲れていた彼にとって、これ(復活上演の監修)は願ってもない仕事だった。彼は場面を入れ替えて劇の構造を強化し、オーケストレーションを修正し、J.シュトラウスの他の作品から二曲を持ってきて追加した」(P101)ということです。1897年生まれのコルンゴルトは、まさにオペレッタ“銀の時代”を天才少年として生きており、彼自身はオペレッタ作品を残していませんが、彼の中に流れるウィーンの血を、間接的にではありますが、この作品を通して知ることができます。作品としては「ホフマンの舟歌」を思わせるメロディやリズムが印象的です。もちろん上質のモノラル録音によるシュヴァルツコップやゲッダの名唱に文句のつけようもありません。なお、TRACK29のはじめで「Komm,Barbara」が「こんばんわ」と聞こえるのが、ただの錯覚なのですが、いつもドキッとしてしまいます。それもまた一興ではあります。

指揮:クルト・アイヒホルン
ミュンヘン放送管弦楽団、バイエルン放送合唱団
アンニーナ:シルヴィア・ゲスティ
ヘルツォーク侯爵:アントン・デ・リッダー
チボレッタ:ジュリア・ミゲネス
カラメッロ:ヨン・ピソ
バルトロメオ・デラックア:エーリッヒ・クンツ etc.
Rec.1975頃
UM−PHILIPS UCCP−3082(国内盤・抜粋)
★★
Unitel製作の映画版のサウンド・トラックからの抜粋盤。ベルト・グルントの編曲となっています。晩年にブルックナー指揮者としてようやく日本でも認知されたアイヒホルンですが、ずっとオペレッタ指揮者として軽く見られていました。ここにもオペレッタを軽視する一面がうかがえます。もちろん演奏は上質です。作品自体がそれほどすぐれているとは思えないので強く推薦するには至りませんが、モノラルだけどシュヴァルツコップを取るか、ステレオでこの盤を取るか。まあ両方そろえましょう。音楽だけの抜粋で、台詞は一切なし。約52分収録。


ヨハン・シュトラウスU世「ジプシー男爵」

初演:1885年10月24日 アン・デア・ウィーン劇場

台本:イグナーツ・シュニッツァー

あらすじ:18世紀中頃のハンガリー・バナト地方にて。
<第1幕>この地はかつてオスマン・トルコが支配していたが、ベオグラードの戦いでオーストリアに負けて逃走した。その際、太守が財宝をここバナト地方に埋めたといううわさを信じ、オットカールは宝探しをしていたがみつからない。そこへ、政府役人カルネロ伯爵とバリンカイがやってくる。バリンカイの父はここの領主だったが、トルコ軍と内通しているという嫌疑がかかり、去っていったのだ。しかしそれが間違いだったことがわかり、領地を相続するためにやってきたのだ。地元の金持ちジュパーンはバリンカイが新しい領主と知り、娘のアルゼーナを結婚させようとたくらむ。しかしアルゼーナはオットカールと恋仲だったので、気が進まない。逢引きするオットカールとアルゼーナ。それをたまたま見てしまうバリンカイ。そこへジプシーたちが挨拶にやってくる。失望したバリンカイはザッフィーというジプシー娘と仲良くし、アルゼーナに見せつける。
<第2幕>しかしザッフィーといるうちに、本当に彼女のことが恋しくなってくる。しかも彼女と一夜を共にしていた、まさにその下から財宝が見つかってしまうのだ。くやしがるオットカールとジュバーン。またジプシー娘との結婚など認められないといきまく政府役人カルネロ。その時徴兵官ホモナイがスペイン戦線のための徴兵にやってくる。カルネロがホモナイにジプシー娘との結婚を認めないように訴えていると、ジプシー女ツィプラが、実はザッフィーはトルコ太守の娘であると明かす。それを聞いて、それではむしろ、田舎領主の自分の方が彼女の身分に釣り合わないと失望するバリンカイ。彼は落胆し徴兵に応じてしまう。
<第3幕>その後戦争から戻ったバリンカイは手柄により男爵となり、めでたくザッフィーと結ばれる。残るはオットカールとアルゼーナの仲。ジュバーンもここまでくると2人の仲を認めざるをえず、めでたしめでたしの大団円となるのであった。
指揮:ハインリッヒ・ホルライザー
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン楽友協会合唱団
バリンカイ:カール・テルカル(T)
ジューバン:エーリッヒ・クンツ(Br)
アルゼーナ:アンネリーゼ・ローテンベルガー(S)
ホモナイ伯爵:ワルター・ベリー(Br)
カルネロ伯爵:クロード・ヒーター(Bs) etc.
Rec.1959.12 ウィーン・ムジークフェライン
To−EMIクラシックス TOCE9554/5(国内盤’97−10)2枚組
★★
ウィーン・フィルと当時の名歌手たちによる録音。指揮のハインリッヒ・ホルライザーはワーグナーなどで職人的な仕事をしてきた実力者ですが、このオペレッタの指揮についても、重厚すぎることなく、違和感を感じさせることもありません。それにもまして、やはりウィーン・フィルのうまさに舌を巻くばかり。もちろん歌手たちも粒ぞろいです。ステレオとしては古い録音となりましたが、録音状態もまだ悪くはありません。


ヨハン・シュトラウスU世「シンプリツィウス」

初演:1887年12月17日 アン・デア・ウィーン劇場

台本:ヴィクトール・レオン


あらすじ:
指揮:フランツ・ヴェルザー=メスト
チューリヒ歌劇場管弦楽団、合唱団、児童合唱団
隠者ヴェンデリン・フォン・グリュッベン:ミヒャエル・フォッレ(Br)
シンプリツィウス:マルティン・ツィセット(T)
フリーセン将軍:ロルフ・ハウンシュタイン(Br)
ヒルデガルデ:エリザベス・マグナソン(S)
アルニム:ピョートル・ベチャーラ(T)
メルヒオール:オリヴァー・ヴィトマー(Br) etc.
Rec.1999.10/11 Live チューリヒ・オペラ・ハウス
EMI CLASSICS 7243 5 65387 2 6(輸入盤)、To−EMIクラシックス TOCE55178/9(国内盤2000−11)
2枚組

世界初録音。チューリヒ歌劇場での復活上演の記録です。映像としてもBS−2で放映されました。シュトラウス自身、オペレッタをさらに演劇的に進化させたSpiel Oper(演技オペラ)として作曲したが、批評家からはオペラともオペレッタとも言えぬ中途半端な作品と評価され、1894年までに3度の改訂がなされ、その後忘れ去られていった作品だとか。常に音楽的進化を遂げようとする作曲家魂と見るか、ワルツとオペレッタだけの作曲家と見られたくないがゆえのあがきととるか。その答えは、この作品自体と、そしてポピュラーたりえなかったという事実が物語っています。J.シュトラウスには彼だけの持つ魅力と個性があるのですから。周りは彼にJ.シュトラウスらしさを期待する。一方彼は、自分を固定化させたくない、そんなギャップと創作する者の苦悩は、いつの時代にもあるものなのでしょうが。


ヨハン・シュトラウスU世「ウィーン気質」

初演:1899年10月25or26日 ウィーン・カール劇場

台本:ヴィクトル・レオン&レオ・シュタイン

あらすじ:1815年のウィーン。
指揮:オットー・アッカーマン
フィルハーモニア管弦楽団、合唱団
ガブリエーレ:エリーザベト・シュヴァルツコップ(S)
ツェドラウ伯爵:ニコライ・ゲッダ(T)
ペーピ・プライニンガー:エミー・ローセ(S)
ヨーゼフ:エーリッヒ・クンツ(T)
ギルデルバッハ侯爵:カール・デンヒ(Br) etc.
Rec.1954.5 ロンドン・キングズウェイホール
EMI CDH 7 69529 2(輸入盤)MONO

*To−EMIクラシックスより「ヴェネツィアの一夜」と2枚組で出ました。
★★
カール劇場からの依頼により、J.シュトラウス自身の手で自作を編曲して構成され始めたが、途中病没したため、アドルフ・ミューラーにより完成された作品。耳慣れた曲が次から次へと紡ぎだされ、J.シュトラウスの集大成といった観を呈しています。アッカーマン盤「ヴェネツィアの一夜」と同時期・同キャストによる上質のモノラル録音で、シュヴァルツコップやゲッダたちの名唱は、ここでもJ.シュトラウスの世界を存分に楽しませてくれます。


カール・ミレッカー「乞食学生」

初演:1882年12月6日 アン・デア・ウィーン劇場

台本:フリードリッヒ・ツェル&リヒャルト・ジュネ

あらすじ:18世紀初めのザクセンに占領されたポーランド・クラカウにて。
<第1幕>ザクセン人でクラカウ総監のオルレンドルフ大佐は、ノヴァルスカ伯爵令嬢ラウラに惚れていた。しかし彼女に接吻しようとして逆に扇で顔を叩かれたため、ノヴァルスカ伯爵一家に恥をかかせてやろうと考える。監獄から美男子を選び、貴族として結婚させ、式当日に真相をばらして物笑いの種にしてやろうと考えたのだ。そこで選ばれたのが貧乏ゆえ密猟して逮捕されたシモンと政治犯ヤン。シモンに金を渡し、ヴィビスキ侯爵としてラウラを誘惑するよう仕向け、ヤンをその秘書とする。いよいよ陥れ作戦が始まり、オルレンドルフ大佐は、花嫁選びにヴィビスキ侯爵がやって来たと人々に告げる。ラウラとブロニスラヴァの姉妹もそれぞれ、シモン扮するヴィビスキ侯爵とヤン扮する秘書に入れあげてしまう。
<第2幕>計画どおりと思いきや、シモンも本当にラウラを愛してしまう。しかし、自分がラウラを偽っていることに苦しみ、真相を打ち開けるつもりだとヤンに言うと、ヤンはまもなく反ザクセンの蜂起が始まるので、それまでこの茶番劇で時間稼ぎをして欲しいと頼む。しかしラウラをだましていることが気になるシモンは、せめて手紙で真相を知らせようとし、ラウラの母である伯爵夫人に言付ける。それを見たオルレンドルフ大佐は自分のたくらみがばれてはもともこもないと、伯爵夫人に、あれは持参金についての手紙だが、結婚前にあまり現実的な話はしない方がいいと言い、封じ込めてしまう。ところが結婚式の日、牢獄の看守エンテリッヒが祝いにやって来て、シモンは乞食学生だったと明かしてしまうので、オルレンドルフ大佐も、すべては自分が仕組んだ仕返しだと告げる。皆から嘲笑される伯爵一族、そしてシモンにだまされていたと悲嘆に暮れるラウラ。
<第3幕>まんまとはめられたオルレンドルフを恨むシモン。そのシモンに一緒に復讐しようともちかけるヤン。幸いオルレンドルフがシモンのことをクラクフ奪回をねらうアダム公爵ではないかと疑っているので、そのままだまして、時間稼ぎをしてほしいとヤンがシモンに頼む。そしてついにオルレンドルフがシモンに、本当はお前がアダム公爵だろうと詰め寄る。シモンが乞食学生などではなく公爵だったと喜ぶ伯爵一家。しかしオルレンドルフは敵であるアダム公爵へ死刑宣告をする。その時本物のアダム公爵が軍勢を引き連れて到着し、オルレンドルフは逮捕される。そしてシモンの手柄をたたえて伯爵にする。誤解が解けたシモンとラウラは、晴れて結ばれるのだ。
指揮:フランツ・アラース
グラウンケ交響楽団、バイエルン放送合唱団
乞食学生シモン・リマノヴィッツ:ニコライ・ゲッダ(T)
パルマティカ,ノヴァルスカ伯爵夫人:ギゼラ・リッツ(A)
ラウラ:リタ・シュトライヒ(S)
ブロニスラヴァ:レナータ・ホルム(A)
オルレンドルフ大佐:ヘルマン・プライ(Br) etc.
Rec.1967.4/73.2 ミュンヘン・ビュルガーブラウ
EMI CLASSICS 7243 5 65387 2 6(輸入盤)2枚組
★★★
J.シュトラウスと並ぶオペレッタ作曲家として、また「こうもり」と並ぶ名作として、この作品は欠かすことができません。「小鳥売り」とあわせ、“金の時代”の三大オペレッタのひとつでしょう。とにかく一度耳にするとすんなりとなじんでしまう作品と言えます。ニコライ・ゲッダ、リタ・シュトライヒ、レナータ・ホルム、そしてヘルマン・プライといった名歌手が、そしてフランツ・アラースの指揮が、この作品を一層質の高いものに仕上げているのかもしれません。名作の名盤として、「こうもり」に魅せられた人に、次に絶対にお薦めする1枚です。


カール・ミレッカー:ハイライト集
1.Der Bettelstudent(乞食学生)
2.Gasparone(ガスパローネ)
3.Die Dubarry(デュバリー伯爵夫人)
S:Gerda Scheyrer,Ilse Liebesberg,Ilse Muller,Ruth Inden,Rosemarie Moogk
T:Karl Terkal,Hans Strohbauer,Jean Lohe,Rudolf Scherfling
Dir.:Paul Walter,Simon Krapp
Chor und Orchester der Volksoper Wien
Der Muller−Grassmannchor,Das FFB Orchester
Rec.?
TuricaphonAG(Switzerland) 73437(輸入盤)MONO

それぞれ25分前後ずつのハイライト集。「乞食学生」はともかく、「ガスパローネ」、「デュバリー伯爵夫人」といったミレッカーの代表作がこれだけまとまって聴けるだけでも貴重です。ミレッカーという作曲家が、口ずさみやすい曲の書けるメロディ・メーカーであることがよく実感できるCDだと思います。音源は不確かですが、ライブではないようです。ただしモノラルですが、音質は良好で聞きやすいです。


カール・ツェラー「小鳥売り」

初演:1891年1月10日 アン・デア・ウィーン劇場

台本:モリッツ・ヴェスト&ルートヴィヒ・ヘルト

あらすじ:18世紀初めのライン地方にて。
<第1幕>チロルの小鳥売りの親方アダムは、村の娘クリステルと恋人である。しかし結婚して村に住むためには、この村で仕事を見つけなければならない。ある日大公が村に視察にやってくる。そんな時いつも、狩猟監督官ヴェプス男爵は、村人から大公にとりもつための賄賂をせしめている。ところが 大公が急用で来られなくなったとの知らせ。それでは賄賂が入らないヴェプス男爵は、甥のスタニスラウス伯爵を偽大公に仕立てることにする。一方大公妃マリーも、夫である伯爵が浮気をしているのではと思い、田舎娘に扮装してお忍びでやって来る。クリステルはアダムと一緒になりたいために、アダムに自分が仕事を見つけてあげると言うが、アダムは意地を張って女の世話にはならないと言ってしまう。そこへ偽の大公スタニスラウスがやって来て、さっそくクリステルに目をつける。クリステルも大公と信じているから、アダムの仕事を頼もうと、スタニスラウスについて行ってしまう。それを知って失望するするアダム。そしてお忍びの大公妃マリーの耳にも入ってしまう。しばらくしてマリーが出てきて、大公にあなたの仕事を頼んだこと、大公との間にはそれ以外に何もないと伝えるが、アダムは信じない。
<第2幕>アダムの採用試験が始まるが、アダムは受かるつもりはないので、いいかげんな返答しかしない。しかし結果は合格とされ、わけがわからない。入れ代わりに大公妃マリーが来て、クリステルから大公の様子を聞き出す。そしてクリステルがアダムのことを真剣に思っているのを知り、自分が何とか間をとりもってやろうと約束する。一方アダムはクリステルに失望し、かわって大公妃とも知らずにマリーに関心を示していく。そこへクリステルが来て、さっきも大公から言い寄られたとマリーに報告するのを聞き、マリーが大公妃と知ってしまうアダム。マリーもクリステルに大公の肖像画を見せ確認すると、クリステルはこの人ではないと答えるので、大公が偽者とわかってしまう。そしてクリステルがアダムに誤解を解くように言うが、アダムは冷たく突き放してしまう。
<第3幕>偽大公とわかり、大公の浮気でなかったことに安心する大公妃。偽大公スタニスラウスはこりもせずクリステルに言い寄るが、彼女はアダムが好きだと言い、きっぱりと断る。それを聞いたアダムもようやくわだかまりを解き、クリステルのことを許すと言う。しかしクリステルから、あなただってマリーに心寄せたじゃないのと反論され、お互いさまということで、めでたしめでたしとなる。
指揮:ヴィリー・ボスコフスキー
ウィーン交響楽団、ウィーン・フォルクスオパー合唱団
チロルの小鳥売りアーダム:アドルフ・ダラポッツァ(T)
大公妃マリー:アンネリーゼ・ローテンベルガー(S)
クリステル:レナーテ・ホルム(S)
アデライーデ:ギゼラ・リッツ(A)
ヴェプス男爵:ワルター・ベリー(Br)
スタニスラウス伯爵:ゲルハルト・アンゲル(T) etc.
Rec.1973.7 ウィーン
EMI CMS 7 69357 2(輸入盤)2枚組
★★
ツェラーもJ.シュトラウスと並ぶオペレッタ作曲家として、またこの作品も「こうもり」、「乞食学生」とならんで“金の時代”の三大オペレッタのひとつと言えるでしょう。なかでも「チロルではバラの花を贈る時は」のメロディの美しさは絶品です。シュヴァルツコップの「オペレッタ・アリア集」での歌唱も忘れられません。その他にも記憶に残るメロディがたくさんあります。ウィーンという都市の洗練よりも、少し鄙びたローカルな雰囲気を感じ取る曲調ですが、それはチロルが舞台という先入観からなのでしょうか。

指揮:フランツ・バウアー=トイスル
グラウンケ交響楽団
ミュンヘン・ゲルトナープラッツ劇場合唱団
チロルの小鳥売りアーダム:アドルフ・ダラポッツァ
大公妃マリー:テレサ・ストラータス
クリステル:ルチア・ポップ etc.
Rec.1970頃
UM−PHILIPS UCCP−3085(国内盤・抜粋)

Unitel製作の映画版のサウンド・トラックからの抜粋盤。ベルト・グルントの編曲となっています。この作品中のとりわけ優れたメロディの7曲を抜粋収録しています。なかでもクリステル役のルチア・ポップの歌「私は郵便配達のクリステル」が可憐で、この盤の一押し聴き所です。台詞なしの抜粋で約25分収録。
なお、このCDには、レオ・ファル喜歌劇「ドルの女王」(抜粋)が併録されています。1907年アン・デア・ウィーン劇場での初演作品(「メリー・ウィドウ」の2年後)ですが、ウィンナ・オペレッタというよりはむしろリンケに通じるベルリン・オペレッタ調です。他の演奏を聴いたことがないので、これが原曲でもそうなのか、それともグルントの編曲によるのかは不明。タチアーナ・イワノワ(オルガ)、ホルスト・ニーンドルフ(クーダー)他とベルト・グルント指揮、グラウンケ交響楽団による1975年頃の録音。こちらも台詞なしの抜粋で約30分収録です。


オスカー・シュトラウス「愉快なニーベルンゲン」

初演:1904年11月12日 ウィーン・カール劇場

台本:リデアムス

あらすじ:中世のブルグント王国にて。
<第1幕>アイスランドの女王ブルーンヒルトは、結婚を申し込んだ者と決闘し、負けたら結婚に応じると言っている。しかし今まで誰も女王には勝てずに殺されてしまっていた。ブルグント王グンターも、女王と決闘しなければならず、そのことで頭が痛い。家臣たちは、英雄ジークフリートに助けてもらうよう進言する。ジークフリートの名を聞いて心ときめかせるのは、王女クリームヒルト。登場したジークフリートも彼女を見て気に入ってしまう。でも実は両者とも相手の財産に実は関心があるのだった。そこへブルーンヒルトの使いが来て、今日はこのあともう一つ決闘があるので、早くしてほしいとの催促。あわてるグンターは助けてくれたものに国土の半分をやると約束するので、ジークフリートは、自分の隠れマントで王をうまくかばってやると申し出る。
<第2幕>ジークフリートの助けもあってグンターはブルーンヒルトに勝ち、めでたく彼女と結ばれた。ジークフリートもほうびにクリームヒルトをもらい、2組の結婚式が開かれている。クリームヒルトはジークフリートに、龍との戦いで血を浴び、それで不死身になったと聞くが、血を浴びなかった部分はあるのかと問いただす。しかしジークフートは答えない。一方ブルーンヒルトは格闘好きで、夫グンターに試合を挑むが、とりあってくれないので、怒って夫を壁に釘打ちしてしまう。ジークフリートに助けられ、ブルーンヒルトとの格闘をまた手助けして欲しいと頼むが、ジークフリートもクリームヒルトに隠れマントを隠されてしまったので、もう助けてあげられないと言う。するとグンターは、では部屋を暗闇にして戦えば大丈夫だからと更に頼み込む。ブルーンヒルトがやって来たので部屋を暗くし、ジークフリートがグンターになりかわって格闘し、おさえつける。ところがその時グンターがけつまづいたので、彼女が部屋のあかりを部下につけさせる。家臣も集まってくるが、そこで目にしたのはジークフリートとブルーンヒルトが抱き合っている姿だった。結局グンターとジークフリートが決闘するはめに。ところが偶然グンターの剣がジークフリートのお尻にささってしまう。この尻こそ、ジークフリートの唯一の弱点だったのだ。
<第3幕>ジークフリートを追い出したいブルーンヒルトではあるが、彼の持っているラインの黄金が気になるところ。そこでブルーンヒルトとグンターは不死身ではなくなったジークフリートの暗殺をたくらむ。妻であるクリームヒルトも、自分への求婚者は他にもいるからと話にのる。一方ジークフリートのもとに小鳥が予言にやってくる。その内容は株も財産も処分して少なくしておく方が身のためというものだった。そこでジークフリートは皆の前でさりげなく新聞を見ながら、株価が下がって財産が少なくなってしまったとぼやく。それを聞いたハーゲンは暗殺のたくらみがばれた事を悟り、ジークフリートにあやまる。しかしブルーンヒルトは納得しない。そこにまた小鳥がやってきて、彼女に財産を分けるのが事を丸く収める最善の策だというのでその通りにする。そしてドイツではお金が物事を解決する方法なのさと皆で歌いながら幕となる。
指揮:ジークフリート・ケーラー
ケルン放送交響楽団、合唱団
ジークフリート:ミヒャエル・ノヴァーク
ブルーンヒルト:グドラム・フォルケルト
グンター:マルティン・ガントナー
ウーテ:ダフネ・エヴァンゲラトス
ダンクヴァルト:ゲルト・グロコウスキ
フォルカー:ハイン・ハイデビュッケル
ギゼルハー:ガブリエル・ヘンケル etc.
Rec.1995.1/2 ケルン・フンクハウス・ザール
CAPRICCIO 10 752(輸入盤)
★★
ワーグナーの楽劇「ニーベルンクの指環」のパロディ・オペレッタ。確かにお話はパロディになっていますが、音の方には残念ながら原曲らしきメロディもワーグナー的響きも期待してはいけません。序曲が終わるや、ワーグナー風に始まり、これは……と期待したのも束の間、歌が始まるとそれほどでもないのです。何度も意識しながら聴いたところでは、ホルンがジークフリートの動機らしきものを吹く、というように、音としてのパロディもないわけではないのですが、むしろワルツもふんだんに取り入れた、ほとんど純然たるウィンナ・オペレッタのサウンドに仕上がっていると言った方がよいでしょう。(楽譜をきちんと調べると、音にも、もっと工夫が凝らされているのかもしれませんが……。)作品としては、結構出来はいいと思います。素敵なワルツに乗せての歌もあります。ちなみに永竹由幸『オペレッタ名曲百科』(P35)によると、ワーグナー作品のパロディ・オペレッタとしては「指環」以外にも、「さまよえるオランダ人」、「タンホイザー」、「ローエングリン」、「トリスタンとイゾルデ」を素材にしたものが、いろいろな作曲家により作られているようです。


オスカー・シュトラウス「チョコレートの兵隊さん」

初演:1908年11月14日 アン・デア・ウィーン劇場

台本:ルドルフ・ベルナウアー&レオポルド・ヤコブソン


あらすじ:1885年、ブルガリアのドロガマン峠近くの町にて。
<第1幕>ポポフ大佐はバルカン戦争に出かけ、妻アウレリア、娘ナーディナ、姪マージャが残っている。ナーディナの婚約者アレキシウス大尉が手柄をたてたという知らせを受け喜びながら、戦地の婚約者のことを思っている。そこへセルヴィア軍の傭兵ブメルリ中尉が部屋に進入して来て、ナーディナにピストルを突きつける。彼はブルガリア軍に追われているのでかくまってほしいと頼むのだった。恐れつつも話をしているうちに、軍馬を御しきれずにてんやわんやしているブルガリヤの間抜けな兵士のことを話す。本来なら射撃されているところだがあきれているうちに、この兵士は一人で無鉄砲にも大暴れして、それが結局手柄扱いされたそうだという内容だった。その男こそ、ナーディナの婚約者アレキシウス大尉だった。あきれるナーディナは、ブメルリ中尉に魅かれていくのだった。そこでブルガリア軍の追っ手から彼をかくまう。追っ手が去った後、アウレリアとマージャが入ってくる。セルヴィア軍服から大佐の服に着替えさせた彼のポケットに、3人の女性はそれぞれこっそりと自分の写真をしのびこませるのだった。
<第2幕>6ケ月後、アレキシウスが戦争から戻ってきた。彼は自分の手柄話をするが、真相を知っているナーディアは冷めている。またポポフ大佐も戻ってくる。ブメルリ中尉が大佐の服をきているのであわてるが、大佐が部屋の奥にいるうちにブメルリが服を返しにくるので、ほっとしたのも束の間、そのポケットに自分の写真を入れた3人の女性はあわてる。かろうじて写真を取り戻すが、ナーディナとマーシャは写真を取り違えてしまう。別れを告げに来たブメルリにナーディナは自分の写真を渡そうとするが、それがマーシャの写真なのに気付いたナーディナは、ブメルリの不実と思ってしまう。一方のマーシャもナーディナの写真を手にし、それをナーディナの婚約者であるアレキシウスに見せ、彼女がブメルリを部屋に連れ込んでいたと告げ口してしまう。実はマーシャもアレキシウスが好きだったので、これをきっかけに自分の方に彼の関心を向けさせようとしたのだ。それを聞いた大尉もナーディナの不実をなじるのだった。
<第3幕>ブメルリとアレキシウスはとうとうナーディナをめぐって決闘することになる。しかしナーディナは、アレキシウスがマーシャとキスをしていたし自分の事を不実となじったのだから、決闘するまでもないとはねつける。結局、ナーディナとブメルリ、マーシャとアレキシウスそれぞれのコンビが円満にまとまって落着となる。
指揮:J・リン・トンプソン
オハイオ・ライト・オペラ管弦楽団
ポポフ大佐:ボイド・マックス
ブメルリ中尉:ダニエル・ニーア
アウレリア:エリザベス・ピーターソン
ナーディナ:スザンナ・ウッズ
マーシャ:グレータ・フィニー
マッサクロフ軍曹:ステファン・ルージング etc.
Rec.1998 Live
NEWPORT CLASSIC NPD85650/2(輸入盤)2枚組

バーナード・ショウの戯曲「武器と人」が原作。このCDが世界初録音のようです。ただし英語版による録音。オハイオ・ライト・オペラは、アーティスティック・ディレクターのジェイムス・ステュワートを中心に、埋もれたオペレッタ作品の英語版による上演の企画をすすめているようです。ここの管弦楽は約30人のオーケストラ。こじんまりとしたサウンドに仕上がっています。ところで、「愉快なニーベルンゲン」が音だけで聴いても、なかなか捨てがたい出来であったのに比して、この作品は、このCDを聴いた限りでは、部分的には美しいワルツのメロディもありますが、全体としては、いまひとつの感は否めません。ただし、この作品は、初演から早くも4年後の1912(明治45)年に、日本でもバンドマン喜歌劇団(イギリス人モーリス・E・バンドマンが東洋での興行を目的にイギリスで結成した喜歌劇団で、明治39年からは毎年定期的に来日していた)によって上演されており、また、浅草オペラでも1918(大正7)年に上演され、その後も何度か上演されています。けっこう人気のあった作品のようです。


オスカー・シュトラウス「クレオパトラの真珠」

初演:1923年11月17日 アン・デア・ウィーン劇場

台本:ユリウス・ブランマー&アルフレッド・グリュンヴァルド


あらすじ:
指揮:ヘルベルト・モッグ
フランツ・レハール管弦楽団、バート・イシュル・レハール・フェスティバル合唱団
クレオパトラ:モレニケ・ファダヨミ(S)
プリンツ・ベラドニス:ミヒャエル・ツァバノフ(T)
ヴィクトリアン・シルヴィウス:アクセル・メンドロク(T)
パンピロス:フォルカー・フォーゲル(Br)
チャーミアン:グンドゥラ・パイエル(S)
マルクス・アントニウス:ロベルト・マイヤー etc.
Rec.2003.8.26−28
cpo 777 022−2(輸入盤)2枚組、SACD/CDハイブリッドディスク

CDのライナーノートに収載されている写真から判断すると、バート・イシュル・レハール・フェスティバルでのコンサート形式上演のもののようです。このCDが世界初録音です。CDでは台詞は省略され、音楽のみが収録されています。オスカー・シュトラウスらしい、軽やかなメロディがいくつか聴けますが、名作「ワルツの夢」のような溢れ出る音楽の泉というわけにはいきません。音楽としての単調な作りは否めません。でも作品の発掘自体は嬉しいですね。3幕で約77分。本来ならばCD1枚に収録できる時間ですが、SACD/CDハイブリッドディスクということもあってか2枚組、しかも値段も割高なのはツライです。


フランツ・レハール「TATJANA」

初演:1896年11月27日 ライプツィヒ

台本:Felix Falzari & Max Kalbeck

あらすじ:
指揮:ミハイル・ユロフスキ
ベルリン放送交響楽団、合唱団
Sergei:Roland Schubert(Bs)
Tatjana:Dagmar Schellenberger(S)
Alexis:Herbert Lippert(T)
Sasha:Karsten Mewes(Br) etc.
Rec.2001.3/6 Sender Freies Berlin,Saal 1
cpo 999 762−2(輸入盤)2枚組
★★
1905年の「メリー・ウィドウ」成功に先立つ1896年に完成されたこの作品(原題「Kukuschka」、のち「Tatjana」に改題)は、“Oper in three acts”となっていて、セリフにもすべて曲が付された、約122分に及ぶ本格的オペラです。もちろん世界初録音。ロシアの軍楽隊長アレクシスと漁師の娘タティヤーナとの悲恋物語であるこのオペラは、3年前の1893年に初演されたプッチーニの「マノン・レスコー」の影響とともに、1879年に初演されたチャイコフスキーの歌劇「エフゲニ・オネーギン」の雰囲気も感じさせる作品です。いずれにしても、ヴェリズモ・オペラの作風になるこの作品は、ドイツ語圏の作品とは思えない音楽です。ましてレハールの作品だとは、音からだけだと想像もつきません。英文ライナーノートによると、“Since nobody showed any interest in this child of my muse,I decided to forget it”というレハール自身の言葉が冒頭に紹介されています。この若書きのオペラは、初演では成功を得たものの、次第に彼自身も“I decided to forget it”と言わざるを得ない、忘れ去られる運命にあったのでした。確かに「マノン・レスコー」の焼き直し的側面もあるかもしれませんが、作品としてそれほどひどい出来とは思えません。むしろ“レハールの”という表現を省けば、約2時間を貫く音の流れは、かなりの水準に達していると思えます。


フランツ・レハール「針金細工師

初演:1902年12月20日 ウィーン・カール劇場

台本:ヴィクトル・レオン

あらすじ:
指揮:ハンス・グラーフ
オーストリア放送交響楽団、オーストリア放送合唱団、ウィーン・モーツァルト少年合唱団
スーザ:エルフィー・ホーバルト(S)
ミッツィ:ヘルガ・パポウシェク(S)
ヤンク:ハインツ・ツェドニク(T)
ミーロシュ:アドルフ・ダラポッツァ(T)
プフェッフェルコーン:フリッツ・ムーリア etc.
Rec.1981.11 Grosser Sendesaal,Wiener Funkhaus
cpo 777 038−2(輸入盤)2枚組

★★
ツェムリンスキーの指揮で初演されたレハール初期の作品です。「ウィーンの女たち」(こちらはアン・デア・ウィーン劇場で初演)と同時進行で作曲・上演され、オペレッタ作曲家レハールが誕生しました。この2つのオペレッタの上演については、あんだんてさんのホームページ「WIEN e MUSICA」内の“作曲家レハールの資料室”に詳しいエピソードが紹介されていて必見です。「ふたりが愛し合っているなら(Wenn zwei sich lieben)」,「Ich bin ein Wiener kind」の2曲の愛すべき歌を含め、ロルツィング風のドイツ・ロマン派喜歌劇に、どことなく後の「ルクセンブルク伯爵」的な雰囲気が加わった作品と言えば、想像がつくでしょうか。このCDは1981年の上演時に録音されたもの(ライブ録音ではなさそう)です。ハインツ・ツェドニクの個性が光りますが、もちろんダラポッツァはじめ、皆、好演です。


フランツ・レハール「ジプシーの恋

初演:1910年1月8日 ウィーン・カール劇場

台本:アルフレート・マリア・ヴィルナー&ロベルト・ボダンツキー

あらすじ:
指揮:フランク・ベールマン
ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団、ハノーファー北ドイツ放送合唱団
アンドレイ・ビエロフ(vn)
Zorika:ヨハンナ・ストイコヴィッチ
Ilona:ダグマル・シェレンベルガー
Jozsi:ゾラン・トドロヴィッチ
Jonel:ベルンハルト・シュナイダー
Jolan:クセニア・ルキッチ
Kajetan:シュテファン=アレクサンダー・ランクル
Dragotin:マルクス・ケーラー etc.
Rec.2003.1&9 Grosser Sendesaal,NDR Hannover
cpo 999 842−2(輸入盤)2枚組
★★★
「メリー・ウィドウ」(1905),「ルクセンブルク伯爵」(1909)という名作で成功を収めたレハールが、ハンガリー色に溢れた作品として生み出した佳曲。なかでも「ツィンバロンの響きをきけば」が有名です。いきなりカールマン的雰囲気の序曲で始まりますが、この時まだカールマンの「チャールダーシュの女王」(1915)も「マリッツァ伯爵令嬢」(1924)はもちろん、「ジプシーの王様」(1912)も生まれていないのだから、そのことをふまえてこの「ジプシーの恋」を聴いてみると、カールマン的というのは間違いであり、レハールの「メリー・ウィドウ」とも「ルクセンブルク伯爵」とも違う、レハールの体の中にあるハンガリー世界を確立した作品と言えるでしょう。「ジプシーの恋」は、「メリー・ウィドウ」,「ルクセンブルク伯爵」と並んでレハール前期3名作と称し、もっともっと評価すべき作品であると感じました(ちなみに後期3名作は「パガニーニ」,「ロシアの皇太子」,「微笑みの国」だと思います)。カールマンもまた、これらのレハール作品から育っていったと言えるでのではないでしょうか。この重要な作品を、この音盤は見事に再現しています。ブックレットには、“First Version 1910” という文字も見えます。


フランツ・レハール「エヴァ(又は工場の娘)」 

初演:1911年11月24日 アン・デア・ウィーン劇場

台本:アルフレート・マリア・ヴィルナー&ロベルト・ボダンツキー

あらすじ:初演当時の現代、ブリュッセルおよびパリ
指揮:ヴォルフガング・ボジチ
フランツ・レハール管弦楽団、バート・イシュル・レハール・フェスティヴァル合唱団
エヴァ:モレニケ・ファダヨミ
ぺピータ・デジレー・パケレート:ゾラ・アントニク
オクターヴ・フロベール:ラインハルト・アレッサンドリ
ダゴベール・ミルフレール:トマス・マリク
ベルナール・ラルス:ゲルハルド・バルッフ
プルネッル:トマス・ツィステラー etc.
Rec.2005.8 バート・イシュル祝祭劇場
cpo 777 148−2(輸入盤)
★★
ダイアローグを含む完全録音で約126分を2枚に収録しています。レハールゆかりのバート・イシュルでの舞台公演による録音のようです。「ルクセンブルク伯爵」(1909)から「パガニーニ」(1925)の間のマイナー作品のうちでは、上の「ジプシーの恋」に続く佳品ではあるでしょうが、別の言い方をすれば、「パガニーニ」で甦るまでの、下降線を辿っていく過程の作品とも言えるかもしれません。もちろん“夢さえあれば”という素敵な曲もありますが。舞台で見れば、もうすこし作品に入りこめるかもしれません。いずれにしても、“夢さえあれば”だけで耳にしていた「エヴァ」を、全曲として手にすることが出来たことは、嬉しい限りではあります。


フランツ・レハール「天文学者」

初演:1916年1月14日 ウィーン・ヨーゼフシュタット劇場

台本:Fritz Lohner and Arthur Maria Willner

あらすじ:
指揮:ヨハネス・ゴリツキ
ノイス・ドイツ室内管弦楽団
フランツ・ホファー:ローター・オディニウス(T)
キティ・ホファー:クラウディア・ロールバハ(S)
リリー・ムース:ハンナ・ドーラ・ストゥールドッティア(S)
パウル・フォン・ライナー:ローベルト・ヴェルレ(T)
 etc.
Rec.2001.12 Sendesaal des Funkhauses,ケルン
cpo 999 872−2(輸入盤)2枚組、SACD/CDハイブリッドディスク

1909年に「ルクセンブルク伯爵」が発表されて以降、「ジプシーの恋」(1910)、エヴァ(1911)、「天文学者」(1916)、「ひばりの鳴く所」(1918)、「春」・「トンボの踊り」・「フラスキータ」(1922)と作られていきますが、いずれも1925年の「パガニーニ」以降の「ロシアの皇太子」、「フリーデリケ」、「微笑みの国」、「ジュディッタ」と比べれば聴き劣りする作品群であることは否めません。この間、時代は第一次世界大戦からハプスブルク朝の終焉、ソヴィエト革命、ナチス結成と不確定要素に包まれた変動期にあたることが、レハールの創作活動にも何らかの影響を与えたのでしょうか。どことなく「ルクセンブルク伯爵」的な雰囲気の部分もありますが、聞いた限りでは、埋もれたのも仕方ないかな、という印象の作品です。3幕物、約80分の作品です。なお2枚目の最後にBonus Trackとして「Overture Rosenstock und Edelweiss(Singspiel in One Act:1912)」という5分弱の曲が収録されています。これらの作品については、こちらのホームページ(英語)を御覧ください。


フランツ・レハール「春」

初演:1922年1月22日 キャバレー“Hell”

台本:ルドルフ・イーガー

あらすじ:
指揮:ヨハネス・ゴリツキ
ノイス・ドイツ室内管弦楽団、マルク・ゴトーニ(ヴァイオリン)
ヘドヴィッヒ:シュテファニー・クラーネンフェルド
トーニ:アリソン・ブロウナー
ロレンツ:ローベルト・ヴェーレ
エヴァルド:マルクス・ケーラー etc.
Rec.2000.3 グロッサー・ゼンダザール
cpo 999 727−2(輸入盤)

アン・デア・ウィーン劇場の地下にある、その名も“Hell”(地獄)という1幕物を専門に扱うキャバレーで初演されたそうです。そう言えば、前奏が終わるや、ピアノがいかにもキャバレー・ソングと思しきメロディを奏ではじめます。作品全体としては、確かにレハールの書いたには違いないメロディ・ラインが聞こえてきますが、まあ埋もれてしまったのもうなずける、というところでしょうか。それでも愛すべき作品であることは確かです。1幕物78分は決して長くありませんでした。


キャバレー・ソング(CABARET SONG)といえば……
★★★ Liane Augustin & The Boheme Bar Trio
  “CABARET SONGS of BERLIN & VIENNA”
    Rec.1955/1956 mono
    VAVGUARD CLASSICS OVC 6011
リンケらのBERLIN CABARET SONGSから16曲、オペレッタ・メロディによるVIENNA CABARET SONGSから21曲、合計約72分を、なかなか素敵な雰囲気で楽しませてくれます。まるでBoheme Barにいるみたいな気になってきます。
★ LOTTE LENYA sings KURT WEILL
  “AMERICAN THEATRE SONGS”
    Rec.1957,1962,1966 stereo
    Sony Classical MHK 60647
ブレヒト・ソングの名歌手ロッテ・レーニャによるクルト・ワイルの曲を中心にアメリカン・シアター・ソング23曲、合計約79分収録。PAUL DESSAUとHANNS EISLERのブレヒト・ソングも1曲ずつ収録されています。また余白にルイ・アームストロングと共演した三文オペラもあり。


フランツ・レハール「フリーデリケ」

初演:1928年10月10日 ベルリン・メトロポール劇場

台本:ルートヴィヒ・ヘルツァー&フリッツ・レーナー=ベーダ

あらすじ:1771年のゼーゼンハイムとシュトラスブルク、そしてその8年後。
指揮:ハインツ・ワルベルク
ミュンヘン放送管弦楽団、バイエルン放送合唱団
フリーデリケ:ヘレン・ドナート(S)
ゲーテ:アドルフ・ダラポッツァ(T)
レンツ:マルティン・フィンケ(T)
ホルテンス:ヘレン・グレーベンホルスト(S)
ザロメーア:ガブリエレ・フッシュ(S) etc.
Rec.1980.5 ミュンヘン・バイエルン放送局
EMI CLASSICS 7243 5 65369 2 0(輸入盤)2枚組

名曲集で取り上げられる「なぜ私の心をキッスで目覚めさせたの」のように、聴かせどころもありますが、作品全体としては、いまひとつ魅力に欠けます。


フランツ・レハール「この世は美しい」 

初演:1930年12月3日 ベルリン・メトロポール劇場

台本:アルフレート・マリア・ヴィルナー&ロベルト・ボダンツキー

あらすじ:初演当時の現代、スイス。
指揮:ウルフ・シルマー
ミュンヘン放送管弦楽団、バイエルン放送合唱団
エリーザベト(リヒテンベルクの王女)&メルセデス・デル・ローザ(バレリーナ):エレーナ・モシュク(S)
皇太子ゲオルグ&サッシャ・カルロヴィッツ伯爵(侍従長):ゾラン・トドロヴィッチ(T)
アルプスホテルの支配人:ローラント・カンドルビンダー(T)
 etc.
Rec.2004.3−4 バイエルン放送局第1スタジオ
cpo 777 055−2(輸入盤)
★★
ダイアローグ無しの全曲録音。約77分。この作品は、1914年に発表された同名のオペレッタを改訂したものだそうです。いかにもレハールらしいメロディの2曲、ゲオルグの“美しきかな、この世界、幸運が君にメルヘンを物語るときこそ”とエリーザベトによる“私は愛しているの、とても愛しているの、もう夢中に愛しているの、まるで少女のように”の他にも、ローザを南米出身のバレリーナとして設定し、タンゴ風の曲を加えているところが、レハールのこの作品での試みと言えるでしょう。演奏面では全く問題なく素晴らしい出来で、このレハールらしくはあるけれども、それほど優れているとも言えないこの作品を、楽しめるまでに再現していることは確かです。


フランツ・レハール「ジュディッタ」

初演:1934年1月20日 ウィーン国立歌劇場

台本:パウル・クネプラー&フリッツ・レーナー=ベーダ

あらすじ:1930年、地中海の港町と北アフリカ
指揮:ヴィリー・ボスコフスキー
ミュンヘン放送管弦楽団、ミュンヘン・コンツェルト合唱団
ジュディッタ:エッダ・モーザー(S)
マヌエレ・ビッフィ:クラウス・ヒルテ(Br)
オクターヴィオ:ニコライ・ゲッダ(T)
アントーニオ:ルードヴィヒ・バウマン(Br)
ピエリーノ:マルティン・フィンケ(T)
アニータ:ブリギッテ・リンドナー(S) etc.
Rec.1983.6/1984.7 ミュンヘン・バイエルン放送局
EMI CLASSICS 7243 5 65378 2 8(輸入盤)2枚組
★★
レハール自身はオペラとして作曲し、彼の作品としては唯一、ウィーン国立歌劇場で初演されたものの、結局はオペレッタとして位置付けられている作品です。入門編で紹介したレハール自演の「Franz Lehar dirigient」でリヒャルト・タウバーとの共演で4曲が聴けますが(主役のオクターヴィオは彼を想定して書いたそうです)、その4曲「友よ、人生は生きる価値がある」、「青く夏の夜のごとく美しく」、「君こそ我が太陽」、「女性の中でも最も美しい女」をはじめ、すばらしいアリアがめじろ押しです。タウバーという才能が創作意欲をかき立てたのかもしれません。もちろん、このCDのニコライ・ゲッダも、エッダ・モーザーともども名唱を聴かせます。

指揮:ルドルフ・ビーブル
メルビッシュ祝祭管弦楽団、合唱団
ジュディッタ:ナターリャ・ウシャコヴァ
オクターヴィオ:メルツァド・モンタツェッリ
ピエリーノ:マルクス・ハインリッヒ
アニータ:ジュリア・バウアー etc.
Rec.2003.2 ORF Funkhaus,Vienna
OEHMS CLASSICS OC 310(輸入盤)
★★
メルビッシュ音楽祭上演目のハイライト盤ですが、上演の半年ほど前に出演者によりスタジオ録音されたものです。上のボスコフスキー盤全曲によると、全20曲のナンバーからなるオペレッタのようですが、このハイライト盤では、そのうちNo.3,9,14の3曲が収録されていません。でも、「ジュディッタ」という作品の音楽を楽しむには十分な収録数(収録時間は65分、台詞なし)と言えるでしょう。レハールという才能が、残された力のすべてを注いで生み出したとも言える充実の作品ですが、作品の質の高さに比べて音盤が少ないだけに、このハイライト盤の登場は、ありがたいです。また、これまでのメルビッシュ音楽祭演目のハイライト盤は、他の盤を差し置いてでも是非、というほどのインパクトはありませんでしたが、この「ジュディッタ」は仕上がりもよく、先ず入手する盤としてお薦めできます。舞台となっている北アフリカ的サウンドも魅力ですし、曲によってはピアノが加わっていますが、それがいい雰囲気を醸し出しています。そう、まるで映画「カサブランカ」(1942)のような……。


フランツ・レハール:Liebessehnsucht(名曲集)
指揮:ヘルムート・フロシャウアー
ケルン放送交響楽団、ジーゲン・フィルハーモニー合唱団
S:Mojca Erdmann,Maria Leyer
Ms:Ingrid Bartz
T:Daniel Kirch,Thomas Dewald etc.
Rec.1998.10 クラウス・フォン・ビスマルク・ザール
CAPRICCIO 10 867(輸入盤)

CAPRICCIOとケルン放送局(WDR)によるオペレッタ・シリーズの1枚。全18曲、約65分収録。そのうち、「エヴァ」(1911)に5曲、「フラスキータ」(1922)に8曲を割いていて、この両曲をある程度まとまって聴けるのが貴重です。この2曲は今のところ全曲盤を見つけておらず、名曲集で数曲を耳にする程度でしたから。フロシャウアーの指揮は、無難な仕上げかと思いきや、意外に濃い表情付けをしているところもあり、なかなか聴かせてくれます。

Marilyn Hill Smith Sings/Lehar & Kalman(名曲集)
指揮:バリー・ナイト
シャンドス・コンサート・オーケストラ
S:マリリン・ヒル・スミス
Rec.1991.1 ロンドン St Jude’s Church
CHANDOS CHAN 6649(輸入盤)

レハールから11曲、カールマンから6曲の合計18曲、約70分収録。当CDには演奏者についての解説がないので、マリリン・ヒル・スミスというソプラノ歌手についても、バリー・ナイトという指揮者についても、その経歴が不明です。オーケストラはその名前からして、このCD録音用の臨時編成でしょう。マリリン・ヒル・スミスは、堪能編で紹介したバリー・ワーズワース指揮、ニュー・サドラーズ・ウェルズ・オペラの英語版「ルクセンブルグ伯爵」ハイライト(1983年録音)で主役アンジェールを歌っていました。おそらくイギリスの主役級オペラ歌手だと思われます。なかなか澄んだ声質で好感が持てます。さらに、レハールでは「ひばりの鳴く所」、「ジプシーの恋」、「エヴァ(工場の娘)」、「美しき哉この世界」、カールマンでは「モンマルトルのすみれ」、「ジョセフィン女帝」、「オランダの少女」、「カーニヴァルの妖精」といった、あまりなじみのない珍しい作品からの曲を取り上げています。落穂拾いといえばそれまでですが、やはり嬉しい企画です。すべてドイツ語で歌われています。

エメリッヒ・カールマン:Operetta Hot & Romantic(名曲集)
指揮:Michail Jurowski
ケルン放送交響楽団
S:Eva Marton
T:Jyrki Niskanen
Rec.1998.5 クラウス・フォン・ビスマルク・ザール
CAPRICCIO 10 849(輸入盤)

CAPRICCIOとケルン放送局(WDR)によるオペレッタ・シリーズの1枚。全14曲(うちオーケストラ曲は5曲)、約72分収録。ワーグナー作品やトゥーランドットでドラマティックな名唱を聴かせるソプラノのエヴァ・マルトンがカールマンの名曲集でも、貫禄ある歌いっぷりで、しかし重くはならず、楽しませてくれます。ブダペスト生まれのマルトンにとって、カールマンの曲は、ごく身近な作品、体感できるメロディなのかもしれません。彼女の歌を聴くにつけ、ぜひ「メリー・ウィドウ」のハンナを歌ってほしいと思いました。おなじみの「チャールダーシュの女王」から3曲、「マリッツァ伯爵令嬢」から4曲のほかに、このCAPRICCIOシリーズの特色として、他ではあまり聴くことのできない埋もれた曲を取り上げている点も見逃せません。このCDでは、「モンマルトルのすみれ」(1930)から1曲、「ジョゼフィーネ皇妃」(1936)から4曲、「悪魔の騎手」(1932)から1曲、それに「Dorfkinderwalzer」というワルツ曲も収録されています。

Kalman Imre:OPERETT JUBILEUM(名曲集)
指揮:マクラーリ・ラースロー
ハンガリー国立ブダペスト・オペレッタ劇場管弦楽団
カロチャイ・ジュジャ、オズヴァルト・マリカ、ニャーリ・ゾルターン、ベンコーツィ・ゾルターン
チェレ・ラースロー、ヴァダース・ジョルト、フィッシュル・モーニカ、シャーンドル・ネーメト etc.
Rec.?
Musica Hungarica MHA332−2(輸入盤)
★★
2004年1月のハンガリー国立ブダペスト・オペレッタ劇場公演の会場で売られていたCD。当劇場のおなじみの歌手たちによるカールマン名曲集です。「Der Teufelsreiner」からの管弦楽曲に始まり、「マリッツァ伯爵令嬢」から6曲、「チャールダーシュの女王」からも6曲、「サーカス妃殿下」から2曲、「モンマルトルのすみれ」から3曲、そして「インドの踊り子」から1曲(“シミー・ダンス”です)など、合計19曲・約59分収録されています。ブダペスト・オペレッタ劇場独特の躍動感を十分堪能できます。もちろんハンガリー語での歌唱ですが、それとてこの劇場を味わうには欠かせない要素のように思えてくるのですから、不思議なものです。すべてステレオ録音ですが、曲によって音質が異なるので、何度かの録音からのコンピレーションと思われます。


エメリッヒ・カールマン「ジプシーの王様(大僧正という邦訳もあり)

初演:1912年10月11日 ウィーン・ヨハン・シュトラウス劇場

台本:F.グリュンバウム&J.ヴィルヘルム

あらすじ:
指揮:クラウス=ペーター・フロール
ミュンヘン放送管弦楽団、スロヴァキア・フィルハーモニー合唱団、バイエルン州立歌劇場児童合唱団

ユリシュカ:エディト・リーンバッハー(S)
サリ:ガブリエーレ・ロスマニト(S)
ガストン:ゾラン・トドロヴィッチ(T)
ラクツィ:ロベルト・サッカ(T)
エストラゴン伯爵:カイ・シュティーフェルマン(Br)
ジプシーの王様パリ・ラクツ:ヴォルフガング・バンクル(Bs)
 etc.
Rec.2003.10 Live Philharmonie im Gasteig
cpo 777 058−2(輸入盤)2枚組

★★★
「陽気な軽騎兵」(1908)、「秋の演習」(1909)に続くカールマンのオペレッタ第3作目にあたるこの「ジプシーの王様」は、作品自体なかなかの出来です。後の傑作「チャールダーシュの女王」(1915)、「マリッツァ伯爵令嬢」(1924)と比しても、その習作の域を越えて、カールマンの個性に溢れた作品として立派に自立した作品となっています。ジプシー・ヴァイオリンとウィンナ・ワルツが交錯するカールマンならではの曲作りも、また子どもたちの歌声をうまく織り交ぜるところも、そしてどこか郷愁を秘めたメロディも、ワルツのリズムと溶け合って心に響いてきます。旧東ドイツ時代の若手ホープとして名を挙げたクラウス=ペーター・フロールは、2002年の二期会・ベルギー王立歌劇場(モネ劇場)提携公演でワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を指揮した時にはそれほどインパクトは感じられませんでしたが、このCDに記録されたライヴでは、ダイナミックに、艶やかに、カールマンの世界を表現していて、やはり並みの指揮者ではないことを実感させてくれます。


エメリッヒ・カールマン「インドの踊り子(THE BAYADERE)」

初演:1921年12月23日 ウィーン・カール劇場

台本:ユリウス・ブランマー&アルフレット・グリュンヴァルト

あらすじ:
指揮:J・リン・トンプソン
オハイオ・ライト・オペラ管弦楽団
オデッタ:ジュリー・ライト
ラジャミ王子:ジョン・ピックル
マリエッタ:スーザン・ミラー
ナポレオン:ブライアン・ウッズ
ピンプリネッタ:ダニエル・ニア
アルマンド:エリック・フェネル etc.
Rec.1997? Live
NEWPORT CLASSIC NPD85655/2(輸入盤)2枚組

オスカー・シュトラウスの「チョコレートの兵隊さん」に先立ってオハイオ・ライト・オペラのアーティスティック・ディレクターであるジェイムス・ステュワートを中心に企画された演目のようです。このCDが世界初録音。英語版になっています。インドの王子とプリマ・ドンナの身分違いの恋という、同工異曲のお話のようです。この当時のウィーン芸術における東洋への視線にもよるのでしょうが、インドというより中近東的サウンドに聞こえます。加えてプッチーニの「蝶々夫人」で蝶々さんが最初に登場する場面のフレーズに似たメロディがあるのは、やはり当時のウィーンでのプッチーニ人気を感じさせもします。もちろんカールマンとすぐわかるサウンドもありますが、心に残るものにはなっていません。なお、この作品は「The Yankee Princess」と名を変えて翌1922年からブロードウェイでも上演され評判になったそうです。


エメリッヒ・カールマン「サーカス妃殿下」

初演:1926年3月26日 アン・デア・ウィーン劇場

台本:ユリウス・ブランマー&アルフレット・グリュンヴァルト

あらすじ:
20世紀初めのサンクト・ペテルベルクとウィーンにて。
<第1幕>サンクト・ペテルブルクのサーカス小屋は、ミスターXの曲馬が話題なっている。大金持ちの未亡人フェードラも彼がお気に入りなのだ。ところが彼女の財産が国外に流出しないように、皇帝からはやくロシア人と結婚するように迫られている。彼女に言い寄る男はたくさんいるが、ゼルギウスもその一人。しかしフェードラからは相手にされない。フェードラから良い返事をもらえないゼルギウスは、彼女がミスターXに好意を持っているからと知り、ミスターXの素性をあばこうとする。そして彼が普段はコロソフ男爵と名乗っていることを探り当て、彼に近づき、自分のパーティに招く。やって来たコロソフを紹介していると、ミスターXがやって来たので、わけがわからないのはゼルギウス。どういうことだとコロソフにたずねると、自分がコロソフに戻っている時に自分の部下にミスターX役をやらせていると説明する。納得したゼルギウスは、フェドーラがコロソフに心魅かれているのを確認するのであった。
<第2幕>それから6週間後のこと。ゼルギウス大公主催の舞踏会が開かれている。フェドーラにふられた彼は、彼女に仕返しを考えている。彼女がコロソフ男爵に好意を持っていることを確認し、彼らを結婚するように仕向け、その時にこそコロソフの正体を明かして恥をかかせてやろうとたくらむ。そして皇帝からの手紙を偽造し、皇帝がフェドーラの相手を決めてしまったので、それに応じたくなければ、今すぐ気になっている人との結婚を進めるしかないと彼女をそそのかす。そこで彼女はコロソフとの結婚を決意するのだが、式の時、かねての予定どおり、ゼルギウスがコロソフすなわちミスターXであると明かし、フェードラは今日からサーカス妃殿下だとあざ笑う。その気位の高さゆえにすっかり恥をかかされてしまったフェードラの怒りは、ミスターXへ向けられる。そこでミスターXは、実は自分はフェージャという名の軽騎兵士官で、かつてフェードラに恋していたが、すでに婚約していたパリンスキー公により左遷されてしまった。そこで出世をあきらめてサーカスの世界に入った。それをあなたはお忘れかとフェードラに問う。彼女も、当時自分がフェージャの愛よりもバリンスキーの財産を選んでしまったことを思い出し、逆に彼に許しを乞うことになる。しかし今度は彼の方が、フェードラから去っていくのであった。
<第3幕>2ケ月後のこと。大公と一緒に食事をしているフェードラのもとに、ミスターXがやって来る。そして給仕にたのんでしばらく大公を座からはずさせる。そのすきにフェードラの所へ行き、今でもやはり彼女への思いは変わらないと告げる。フェードラも同じ思いであった。ただ彼にサーカスはやめてほしいと頼む。それは身分にこだわっているのではなく、あなたの体が心配なのだと言うに及び、2人は結ばれるのであった。
<ハイライト盤>
指揮:ロベルト・シュトルツ
ベルリン交響楽団、ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
フェドーラ・パリンスカ公女:マルグリット・シュラム(S)
ゼルギウス・ヴラディミール大公:ユリウス・カトナ(T)
ミスターX:ルドルフ・ショック(T)
メイベル・ギブソン:グッギ・ローウィンガー(S)
トーニ:フェリー・グルーバー(T) etc.
Rec.?
BMG eurodisc 74321 21354 2(輸入盤)
★★
ハイライツ13曲、約51分収録。初めて聴いても一度聴いたことがあるような感じを抱かせる、いわばカールマンらしいメロディに溢れた(悪く言えば似たり寄ったり、ということなのだけど、それが許せるのです。むしろそれがいいと言ってしまってもかまいません)、とても耳になじみやすい作品です。聴いている最中は、耳になじんでいるのに、聴き終わってみると鮮明に残るメロディがない、というところが、堪能編の「チャールダーシュの女王」、「マリッツァ伯爵令嬢」、「シカゴの大公令嬢」の三大作から一等落ちる所以なのでしょうが。シュトルツ指揮のこのCDは、こなれた語り口調で楽しませてくれます。


ハインリッヒ・ベルテ「3人姉妹の家」

初演:1916年1月15日 ウィーン・ライムント劇場

台本:アルフレート・マリア・ヴィルナー&ハインツ・ライヒェルト

あらすじ:1826年夏のウィーン。
指揮:アルフレッド・ワルター
ケルン放送交響楽団
シューベルト:トーマス・デヴァルド(T)
ショーバー男爵:ベルンハルト・シュニーデル(T)
ガラス職人チェル:ペーター・ミーニッヒ(T)
ヘーデル:モイカ・エルドマン(S)
ハイデル:マリーナ・エーデルハーゲン(S)
ハンネル:アンネリ・プフェファー(S) etc.
Rec.1997.1 ケルン・フンクハウス・ザール
CAPRICCIO 10 550(輸入盤)

CAPRICCIOによるケルン放送交響楽団を起用してのオペレッタ全曲シリーズの1枚。ルドルフ・バルッチの伝記小説をもとに、作曲家フランツ・シューベルトの恋を描く作品。当初はベルテ自身の作曲に対して部分的にシューベルトの曲を挿入する程度だったが、劇場支配人の依頼により、シューベルトの曲を全面的に使用してベルテが編曲を受け持つことになり、結果的に大成功したそうです。しかし、リヒャルト・シュトラウスは、作曲家の死後もその作品は保護されるべきであり、本人の承諾なく勝手に変更、しかも低俗なオペレッタにしてしまったと、この作品を攻撃したそうです。


レオン・イェッセル「シュヴァルツヴァルト(黒い森)の娘」

初演:1917年8月25日 ベルリン・コーミッシュ・オーパー

台本:アウグスト・ナイトハルト

あらすじ:1900年頃のシュヴァルツヴァルト地方ザンクト・クリストフ村。
指揮:ヴィリー・マッテス
シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団、合唱団
ブラシウス・レーメル:ベンノ・クシェ(Bs)
ベルベレ:ブリギッテ・リンドナー(S)
ハンス:アドルフ・ダラポッツァ(T)
マルヴィーネ・フォン・ハイナウ:ダグマール・コラー(S)
リヒャルト:マルティン・フィンケ(T) etc.
Rec.1976.6 シュトゥットガルト・フィルハーモニー
EMI CLASSICS 7243 5 66380 2 0(輸入盤)
★★
ベルリン・オペレッタの名作とされる作品。イェッセルは1871年生まれですから、1870年生まれのO.シュトラウスやレハールと同世代の作曲家です。柔らかな3拍子と軽快な2拍子を基本にしていて、とりわけ“Mein Fraulein,ach ,ich warne Sie”(お嬢さん、ああ、貴女に警告します)のように美しいメロディもあります。ただ、O.シュトラウスやレハールと同世代と言っても、彼ら“銀の時代”の曲ように甘美な旋律で酔わせるよりは、むしろ“金の時代”のJ.シュトラウスU世の影響が大きいと言えます。明快なメロディ・ライン、あるいは硬派のワルツとでも言えばよいでしょうか、重厚な響きを基調として、しっかりとした造型を感じさせます。マッテスの指揮は、ここでもうまいし、ベンノ・クシェが聴けるのも嬉しいです。


ラルフ・ベナツキー「白馬亭にて」

初演:1930年11月8日 ベルリン・グロース・シャウシュピールハウス

台本:ハンス・ミュラー&エリック・シャレル

あらすじ:1910年頃のオーストリア・ザルツカンマーグート、ヴォルフガング湖畔。
指揮:ヴィリー・マッテス
ミュンヘン放送管弦楽団、バイエルン放送合唱団、ミュンヘン少年合唱団
白馬亭女主人ヨゼファ:アンネリーゼ・ローテンベルガー(S)
レオポルド・ブラントマイヤー:ペーター・ミニッヒ(T)
オッティリエ:グリット・ヴァン・イェーテン(S)
オットー・ジードラー博士:ノルベルト・オルス(T) etc.
Rec.1978.4 ミュンヘン・バイエルン放送局
EMI CLASSICS 7243 5 66581 2 7(輸入盤)
★★
楽しい音楽ではあるが、安っぽいと言えなくもない作品。クラシック色とポップス色が相半ばする雰囲気をもっていて、全体に統一感に欠けるように思えます。同じくウィンナ・ワルツとジャズ(おまけに中国音階までも)を併せ持ったカールマンの「シカゴの大公令嬢」に比べて、ワルツもジャズも、洗練さにおいて一段下がると思います。むしろ、この作品の一番の特徴は、やはりウィンナ・オペレッタに比べて如実に、ベルリン・オペレッタとブロードウェイ・ミュージカルの連続性を強く実感できる点でしょう。ただしマッテス指揮の演奏に悪かろうはずはありません。曲の魅力を最大限に引き出しています。


エドゥアルド・キュネッケ「魅惑の炎」

初演:1933年12月25日 ベルリン・ウエスタン劇場

台本:パウル・クネップラー&J.M.ウェルミンスキー

あらすじ:
指揮:ピーター・フォーク
ケルン放送交響楽団、合唱団
Ralf Lukas,Brigit Fandrey,Zoran Todorovic
Christiane Hossfeld,Maria Malle
Jurgen Sacher,Gerhard Peters
Gerd Grochowski,Theodor Weimer
Rec.1994.11 ケルン放送局・ゼンダザール
CAPRICCIO 10 753(輸入盤)
★★
CAPRICCIOはケルン放送交響楽団を起用して、O.シュトラウスの「愉快なニーベルンゲン」やレハールの「メリー・ウィドウ(Original version)」、ベルテの「3人姉妹の家」、そしてこのキュネッケ「魅惑の炎」と、貴重な録音を行っています。全曲録音に関してはこれら4作品しか目にしていませんが、他作品も録音しているのでしょうか。あるいはオペレッタ・シリーズの企画があるのでしょうか。CD−NOWのクラシック検索のCAPRICCIOレーベルでは見つけることは出来ませんでした。
さて、この「die lockende Flamme」(邦訳不明のため「魅惑の炎」と訳しておきます)は、“romantic singspiel”と作曲者自身が言っているように、もちろんオペレッタ的サウンドの三拍子曲も1曲はありますが、その全曲を通してほとんどの部分はオペラを意識した本格的な作りとなっており、また歌もかなりの技巧を要求するものになっていて、次にあげる「夢の国」と同じ作曲者の作品とはとても思えません。ツェムリンスキー、シュレーカー、ブラウンフェルス、そしてコルンゴルトといった、当時のオペラ作家の作品の系列に組み入れても少しも遜色がない、なかなかの力作であり、そしてこのCDは掘り出し物です。
ちなみにこの作品が作曲された1933年、ナチスは妻がユダヤ人という理由で、キュネッケの作品のラジオ放送を禁じました。しかし2年後には解禁しています。キュネッケ作品がドイツの人々に絶大な人気を博していたために、特別扱いをせざるをえなかったということのようです。(エリック・リーヴィー『第三帝国の音楽』による)


Robert Stolz/Operetten」
「Robert Stolz zum 25. Todestag」
指揮:Klaus Arp,Peter Falk,Emmerich Smola,Paul Landenberger,Roland Seiffarth
S:Eva Lind,Helen Donath,Margit Schramm,Elfie Mayrhofer
T:Manfred Schmidt,Donald Grobe,Walter Anton Dotzer
Br:Paul Ritter,Peter Frohlich
Bs:Gunter Wewel
「Robert Stolz dirigiert seine eigenen Werke」
指揮:ロベルト・シュトルツ
S:Melitta Muszely,Liane Augustin,Monika Dahlberg
T:Heinz Hoppe
Rec.?
hanssler CLASSIC CD93.007(輸入盤)2枚組

2枚組のロベルト・シュトルツ名曲集。1枚目は録音年月不明ながら、没後25周年記念とあるので、1975年に亡くなったことからすると、2000年の録音でしょうか。5人の指揮者と10人の歌手の演奏からなる20曲、約75分ステレオ収録です。2枚目はシュトルツ自作自演で、14曲、約52分。モノラル収録ですが、音質は良好です。すでに“CABARET SONGS of BERLIN & VIENNA”で紹介したLiane Augustinも4曲を歌っています。ウィンナ・オペレッタらしい魅惑のワルツ調メロディからキャバレー・ソング風のものまで、シュトルツ音楽をほぼ網羅しているといっていいでしょう。


operetten melodien」
リンケ「ルーナ夫人」抜粋(10曲)
リンケ「IM REICH DES INDRA」抜粋(6曲)
リンケ「LYSISTRATA」抜粋(5曲)

指揮:ヴィリー・マッテス
グラウンケ交響楽団、バイエルン放送合唱団
Erika Koth,Ursula Reichart(S)
Gisela Litz(A)
Heinz Hoppe(T)
Harry Friedauer(Br)
ベナツキー「白馬亭にて」抜粋(2曲)
レイモンド「SAISON IN SALZBURG」抜粋(2曲)

指揮:カール・ミヒャルスキ
オペレッタ大管弦楽団、ベルント・ハンセン合唱団
Gretl Schorg,Franziska Wachmann
Bruni Lehnen,Kurt Wehofschitz,Willi Hofmann
Karl Friedrich,Camillo Felgen
Rec.1966(リンケ),1958
EMI CLASSICS 7243 5 75152 2 1(輸入盤)
★★★
ベルリン・オペレッタの代表的作曲家パウル・リンケ(1866−1946)の作品からのハイライト集です。しかも、嬉しいことに、演奏がオペレッタを最高水準で表現するヴィリー・マッテス指揮、グラウンケ交響楽団のコンビなのです。1曲目の「ルーナ夫人」からのイントロダクション(「ベルリンの風」で有名なメロディ)が始まるや、一瞬のうちにマッテスの紡ぎだす音空間に引き込まれていきます。この深入編で紹介しているベルリン・オペレッタのハイライト集の多くが、アメリカ風の軽いバンド編成・オーケストレーションを基調にしている(原曲がそうなのか、編曲によるものなのかはわかりませんが、多分に後者でしょう)のですが、このマッテス盤は、グラウンケ交響楽団ともども、フル・オーケストラによる正攻法の演奏となっています。ワルツもふんだんに奏でられていますし、もちろん歌手たちの歌も、オペレッタの楽しさを存分に伝えてくれます。この音盤は、リンケがレハール(1870−1948)と生没ともほぼ同時代を生きたということをあらためて実感させてくれるのです。代表作「ルーナ夫人」は、是非とも全曲を聴いてみたいし、舞台でも見てみたいという思いを募らせます。リンケの3作品から21曲、約43分の収録。なお、ボーナス・トラックとして、ベナツキーとレイモンドの作品から4曲、約25分も収録されていて、総計約68分となっています。レイモンドの「SAISON IN SALZBURG」も、僅かに2曲ながら、他では聴くことができないので、このCDの価値をさらに高めています。

operetten melodien」
ファル「陽気な農夫」抜粋(8曲)
ファル「ドルの女王」抜粋(10曲)
ファル「イスタンブールのバラ」抜粋(10曲)

指揮:カール・ミヒャルスキ(1曲のみHans Moltkau)
グラウンケ交響楽団(1曲のみバイエルン国立歌劇場管弦楽団)
Heinz Maria Lins,Heinz Hoppe,Benno Kusche,Fritz Wunderlich,Sonja Knittel,
Brigitte Fassbaender,Wolfgang Eber,Wolfgang Matoschat,Horst Nikola,Sari Barabas,
Harry Friedauer,Christine Gorner,Melitta Muszely
Rec.1962〜1963
EMI CLASSICS 7243 5 75818 2 0(輸入盤)
★★
レオ・ファル(1873−1925)のオペレッタ代表作3作からのハイライト集です。ハイライトといっても、主要メロディは、ほぼ網羅されているようです。レハールと同世代のレオ・ファルですが、音楽はいずれも“金の時代”のオペレッタの雰囲気を継承しています。初演は以下のとおり。
  「陽気な農夫」1907年7月27日マンハイム市立歌劇場
  「ドルの女王」1907年11月2日アン・デア・ウィーン劇場
  「イスタンブールのバラ」1916年12月2日アン・デア・ウィーン劇場
良好なステレオ録音で、全28曲約70分収録。

「operetten melodien」
ファル「愛しのアウグスティン」抜粋(8曲)
ドスタル「クリヴィア」抜粋(9曲)
ドスタル「ハンガリア式結婚式」抜粋(9曲)

指揮:カール・ミヒャルスキ(ファル),ヴィリー・マッテス(ドスタル)
グラウンケ交響楽団
Benno Kusche,Sari Barabas,Heinz Hoppe,Heinz Maria Lins,Christine Gorner,
Ursula Reichart,Harry Friedauer
Rec.1963.4(ファル),1966.6(ドスタル)
EMI CLASSICS 7243 5 75815 2 3(輸入盤)
★★★
レオ・ファルのオペレッタ1作に加え、ニコ・ドスタル(1895−1981)のオペレッタ2作が収録されています。むしろドスタルを聴くCDと言っていいかもしれません。「ハンガリア式結婚式」はもちろん、「クリヴィア」もなかなか素敵な作品です。この2作品を聴くと、ドスタルという人は、カールマンの後継者(悪く言えば亜流ということですが、でもやはり亜流と言って済ませるには惜しい、魅力的な音楽なのです)と言うべき存在であることがわかります。しかも、これらをヴィリー・マッテス&グラウンケ交響楽団という名コンビが奏でるのですから、もう文句のつけようもありません。これは絶対に“買い”です。初演は以下のとおり。
  「愛しのアウグスティン」1912年
  「クリヴィア」1933年
  「ハンガリア式結婚式」1939年2月4日シュトゥットガルト州立歌劇場
良好なステレオ録音で、全26曲約69分収録。

なお、ドスタルは最晩年にベルリン・フィルと自作の管弦楽曲集を録音しています。こちらはカールマンというよりは、リヒャルト・シュトラウスがウィーンを懐かしみながらガーシュウィンと組んでシネマ・クラシックを作った、という感じのロマンティックでシャレたメロディに溢れた曲集です。とくると、それはコルンゴルト風の曲想にもなります(まあ、要するにオリジナリティはほとんど感じられないということですが。それでもいいでしょ、素敵な音楽なら)。
 「Nico Dostal conducts Nico Dostal」
  スケルツォ序曲「楽しい遊び」/組曲「スペインのスケッチ」/
  演奏会用ワルツ「ウィーンの思い出」/ピアノと管弦楽のためのブルース幻想曲/
  恋をしている人のための月(組曲「異国情緒」より)/ロマンティック組曲「私の山で」
    ニコ・ドスタル指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、pf:ロータル・ブロダック
    cpo 999 811−2(輸入盤) Rec.1979.3


「operetten melodien」
ファル「マダム・ポンパドゥール」抜粋(6曲)
ミレッカー「デュバリー伯爵夫人」抜粋(6曲)
アブラハム「ハワイの花」抜粋(9曲)
カッティング「バルカンの恋」抜粋(6曲)
シュレーダー「天国での初夜」抜粋(7曲)

指揮:Werner Schmidt−Boelcke,Carl Michalski
FFB−Orchestra,Orchester des Bayerischen Rundfunks,Gunther Arndt−Chor,Bernd Hansen Chor
アンネリーゼ・ローテンベルガー、ルドルフ・ショック、カール・エルンスト・メルカー、ハリー・フリーダウアーリゼロッテ・シュミット、
メリタ・ムスツェリィ、カール・テルカル、サリ・バラバス etc.
Rec.1959〜1961
EMI CLASSICS 7243 8 26393 2 9(輸入盤)

このCDも、レオ・ファルをはじめ、なかなか耳にすることの出来ない5つのオペレッタからのハイライト集として、貴重なものです。初演は以下のとおり。ただし「ハワイの花」と「バルカン・リーベ」については不明です。
  「デュバリー伯爵夫人」1879年10月31日アン・デア・ウィーン劇場
  「マダム・ポンパドゥール」1922年9月9日ベルリン市民劇場
  「天国での初夜」1942年9月24日ベルリン
ルドルフ・ショックを中心とした歌手陣による演奏は、上々の仕上がりとなっています。「天国での初夜」のみ、別のグループによる録音です。古さを感じさせないステレオ録音で、全34曲約67分収録。

「operetten melodien」
キュネッケ「かの地から来た従兄弟」抜粋(9曲)
ワルター・コロ&ヴィリー・コロ「WIE EINST IM MAI」抜粋(8曲)

指揮:ヴィリー・マッテス(キュネッケ),Horst Kudritzki(コロ)
グラウンケ交響楽団,FFB−Orchestra(コロ)
Erika Koth,Christine Gorner,Karl−Bernhard Hauer,Ursula Schade,Jurgen Forster,
Heinz Hoppe,Brigitte Mira,Ursula Schirrmacher,Lucie Klaar,Willi Rose,
Gunther Schwerkolt,Heinz Maria Lins
Rec.1965.4(キュネッケ),1961.7(コロ)
EMI CLASSICS 7243 5 75816 2 2(輸入盤)
★★★
キュネッケ(1885−1953)の代表作「かの地から来た従兄弟」は、1921年4月15日にベルリンのノレンドルフプラッツ劇場で初演されました。パウル・リンケ(1866−1946)の後継と言うべきベルリン・オペレッタの名作です。ヴィリー・マッテス指揮、グラウンケ交響楽団の名コンビで聴けるのも嬉しいです。初めて聴いてもどこかで聴いたような、耳になじむ、口ずさみたくなるようなメロディに溢れていて、楽しめます。なおこのCDには、もうひとつの作品、ルネ・コロの祖父ワルター(1878−1940)と父ヴィリー(1904−1988)の合作によるオペレッタ「WIE EINST IM MAI(As it once was in May)」が収録されています。CD−Premiereと付記されています。軽音楽風のなじみやすいメロディ(オーケストレーションも軽めです)は、劇場よりもキャバレーで歌い継がれていくようなものになっています。良好なステレオ録音で、全17曲約53分収録。

キュネッケ「夢の国」抜粋(16曲)
指揮:ハインツ・ゲーゼ
ベルリン交響楽団員、SFBタンツ管弦楽団員、ロージー・シンガース
インゲボルク・ハルシュタイン、ルネ・コロ、ペーター・フレーリヒ、ダグマル・コラー
リンケ「ルーナ夫人」抜粋(11曲)
指揮:カール・ミヒャルスキ
ベルリン交響楽団、サニーズ&コーネルズ・トリオ
ゾーニャ・クニッテル、エディト・ショルヴァー、ハインツ・ホッペ、ハインツ=マリア・リンス
Rec.1963,1977?
TELDEC 3984−26323−2(輸入盤)、WJ−テルデック 10140(国内盤’99−5)

ベルテ「三人姉妹の家」抜粋(10曲)
指揮:ヘルマン・ハーゲシュタット
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
アブラハム「ヴィクトリアと軽騎兵」抜粋(12曲)
指揮:リヒャルト・ミュラー=ラムペルツ
オペレッタ大管弦楽団
ドスタル「ハンガリーの婚礼」抜粋(9曲)
指揮:ハンス・ゲオルク・オットー
ベルリン国立歌劇場管弦楽団、ロージー・シンガース
ソーニャ・シェーナー、ルイーゼ・カメル、マルガリーテ・ギーゼ、ドーナルト・グローベ、ハリー・フリーダウアー、
ハインツ=マリア・リンス etc.
Rec.1960,1964?
TELDEC 3984−26324−2(輸入盤)、WJ−テルデック 10136(国内盤’99−5)

ベナツキー「白馬亭にて」抜粋(14曲)
指揮:カール・ミヒャルスキ
オペレッタ大管弦楽団&合唱団
マリオン・ブリナー、ペーター・ミニヒ、フレデリック・マイアー、ブルーノ・フリッツ etc.
シュレーダー「天国での初夜」抜粋(11曲)
指揮:リヒャルト・ミュラー=ラムペルツ
オペレッタ大管弦楽団
ドーナルト・グローベ、ソーニャ・シェーナー、ハインツ=マリア・リンス、ハリー・フリーダウアー etc.
Rec.1964,1965?
TELDEC 3984−26326−2(輸入盤)、WJ−テルデック 10139(国内盤’99−5)

国内盤は「今宵はオペレッタ」シリーズ全10タイトルで、ここにあげた3枚以外は、J.シュトラウスU世、ミレッカー、ツェラー、オスカー・シュトラウス、レハール、カールマンらの、これまでこのHPでも紹介してきた作品の、それぞれ抜粋盤です。この3枚のCDに収録されている曲は、ベルテの「三人姉妹の家」とベナツキーの「白馬亭にて」以外は、全曲盤はおろか、オペレッタ名曲集のようなものにもほとんど収録されていないようですから、それぞれ、これほどまとまって聴けるのは貴重です。初演は次のとおりです。
  「ルーナ夫人」1899年5月1日ベルリン
  「三人姉妹の家」1916年1月15日ウィーン
  「ヴィクトリアと軽騎兵」1930年2月21日ブダペスト
  「白馬亭にて」1930年9月8日ベルリン
  「ハンガリーの婚礼」1939年2月4日シュトゥットガルト
  「夢の国」1941年11月ドレスデン
  「天国での初夜」1942年9月24日ベルリン
この中では、「ルーナ夫人」がベルリン・オペレッタとしての魅力をなじみやすいメロディで歌い上げています。毎年6月にベルリン郊外の野外劇場ヴァルトビーネで行われるベルリン・フィル・サマー・コンサートの定番アンコールとして最後を締めくくる「ベルリンの風」は、このオペレッタが原曲です。「三人姉妹の家」はシューペルトが主人公で、音楽もシューベルトの曲を多用しています。残りのアブラハム、ドスタル、キュネッケ、シュレーダーの4作品は、ベナツキーの「白馬亭にて」同様、音楽は相当にアメリカ風、ミュージカル風に仕上がっており、やはり1930〜1940年代作品の特徴を明確にうかがうことができます。オーケストレーションも、オーケストラというよりバンドと言った方がよいような軽めのものになっています。アメリカ文化のヨーロッパ進出ということもあるでしょうが、同時に大掛かりなオーケストラ構成や演出が不可能になっていく時代の反映とも言えるのかもしれません。楽しいことには変わりありませんが(ただし、この印象はこれらのCDにおける編曲にも拠っていると思われます。残念ながらオリジナルがどのようなオーケストレーションであったかは不明なので)。一部モノラルあり(ドスタル)。

OPERETTEN Festival
CD1:J.シュトラウス「ヴェネツィアの一夜」ハイライト
CD2:J.シュトラウス「ジプシー男爵」ハイライト
CD3:カールマン「マリッツァ伯爵令嬢」ハイライト
CD4:カールマン「チャールダーシュの女王」ハイライト
CD5:レハール「微笑みの国」・「メリー・ウィドウ」ハイライト
指揮:ERNST MARZENDORFER(1)&Ungarischs Staatsorchester
    FRANZ MARSZALEK(2,3,4,5〔微笑みの国〕)&Kolner Rundfunk−Orchester
    FRANZ BAUER−THEUSSL(5〔メリー・ウィドウ〕)&Orchester der Wiener Volksoper
Rec.?
BRILLIANT CLASSICS 6217/1〜5(輸入盤)5枚組
  1  2  3  4  5

激安セット物を立て続けに出しているBRILLIANT CLASSICS(海賊盤ではなく、ちゃんとライセンスを取得して復刻しているそうです。ロイ・グッドマン&ハノーヴァー・バンドによるシューベルトの交響曲全集は絶対の買い。ブラームスの室内楽全集やアントン・パウリク&ウィーン・フォルクスオパーによるシュトラウス・ファミリーのワルツ・ポルカ集もまあまあよかったです)からのオペレッタ・ハイライト集5枚組ボックス。「ヴェネツィアの一夜」・「微笑みの国」・「メリー・ウィドウ」はステレオ、「ジプシー男爵」・「マリッツァ伯爵令嬢」・「チャールダーシュの女王」は擬似ステレオ?――録音データがないので不明ですが、録音状態からすると1950年代から60年代のもののような印象を受けます。演奏は、それほど悪くありません(という言い方が一番妥当のような……)。値段(5枚で¥2000を切ります)からすれば、オペレッタ盤収集の上からも、一つの演奏として、ぜひ持っておきたい。でも、これらの曲を聴くならこの盤を、と人にお薦めするほどのものではない。そんな位置付けでしょうか(自分ながら言い得て妙!? )。唯一の売りは、「マリッツァ伯爵令嬢」のタシロ役がなんとフリッツ・ヴンダーリッヒであること。このページそのもので深入りにはまってしまったのであれば、この1枚のためにこのセットを買うと言ってもいいかもしれません。



*ここまできたなら、やはりミュージカルの名作・名盤にも触れておきましょう。*

ジグムンド・ロンバーグ「ハイデルベルクの学生王子」

初演:1924年12月 ニューヨーク Jolson’s 59th Street Theatre

台本・作詞:ドロシー・トネリー

あらすじ:19世紀中頃のカールスバーグ(架空の国)。その国の皇太子カール・フランツは、ハイデルベルク大学に留学していた。そこでビヤガーデンの娘キャシーと恋仲になる。しかし国王が病であるとの知らせを受け、キャシーと別れ、王子は帰国する。2年の後、国王となったフランツは婚礼のために隣国へと向かうが、その途中立ち寄ったハイデルベルクでキャシーと再会する。しかし今やどうにもならない。青春の日々はもう二度と戻らないと歌い、二人は別れていく。
指揮:ジョン・オーウェン・エドワーズ
フィルハーモニア管弦楽団、アンブロジアン・コーラス
Dr.Engel:Norman Bailey
Kathie:Marilyn Hill Smith
Princess Margaret:Diana Montague
Prince Karl Franz:David Rendall etc.
Rec.1989.9 CTS Studios
TER Classics CDTEO1005(輸入盤)
★★
ジグムンド・ロンバーグ(1887〜1951)は、ハンガリーに生まれ、ウィーンで音楽教育を受けた後、1909年に渡米し、ヴィクター・ハーバード、ルドルフ・フリムル(いずれもヨーロッパ出身)とともにアメリカン・オペレッタとして1920年代のブロードウェイを牽引していきました。ジェローム・カーンやジョージ・ガーシュウィンといったアメリカ生まれの才能により、ヨーロッパ文化としてのオペレッタからアメリカ文化としてのミュージカルへと脱却していくまでのつなぎとして果たした役割は、やはり大きかったと言えるでしょう。「学生王子」は1920年代のブロードウェイで608回という最多上演回数を数えた作品です。堪能編で紹介したニュー・サドラーズ・ウェルズ・オペラによる英語版レハールの「メリー・ウィドウ」や「ルクセンブルグ伯爵」と同じレーベルによるハイライトCDですが、この「学生王子」はもともと英語による作品だけに、レハールの時のような違和感はありません。


ジグムンド・ロンバーグ:ハイライト集
CD1:「五月の頃」(1917)から1曲
    「花咲く頃」(1921)から2曲
    「学生王子」(1924)から11曲
    「砂漠の歌」(1926)から3曲
    「マイ・メリーランド」(1927)から2曲
CD2:「砂漠の歌」(1926)から8曲
    「ニュー・ムーン」(1928)から6曲
     (ロベルト・シュトルツの「ブルー・トレイン」
                 から8曲が加えられています)
Rec.1918〜1927
Pearl GEM 0112(輸入盤)MONO、GEMM CD 9100(輸入盤)MONO
★★
ロンバーグの代表的作品が網羅されているこの2枚のCDを聴くと、なかでもジェローム・カーンがどれだけロンバーグの影響を受けているかがわかります。Pearlによる復刻CDは、下のジェローム・カーンの「ショウ・ボート」ともども貴重な音源を、良質な音で提供しています。


ジェローム・カーン「ショウ・ボート」

初演:1927年12月27日 ニューヨーク・ジーグフェルド劇場

台本・作詞:オスカー・ハマースタインU世&P.G.ウォードハウス

オーケストレーション:ロバート・ラッセル・ベネット
指揮:フランツ・アラース
ラヴェナル:ジョン・レイト
マグノリア:バーバラ・クック
ジョー:ウィリアム・ウォーフィールド
ジュリー:アニタ・ダリアン
クウィニー:ルイゼ・パーカー etc.
Rec.1961.12 ニューヨーク・Columbia 30th Street Studios
COLUMBIA SK61877(輸入盤)
★★★
1885年ニューヨーク生まれのジェローム・カーンが1895年ニューヨーク生まれのオスカー・ハマースタインU世と組んで発表した最高傑作です。「ブロードウェイで初めて本格的なストーリーをもったミュージカル」(井上一馬『ブロードウェイ・ミュージカル』文春新書044)と評価されますが、音楽的には、ウィンナ・オペレッタ、ベルリン・オペレッタから影響を受けて始まったブロードウェイ・ミュージカルが、逆にウィンナ・オペレッタに影響を与えるまでの水準になった、草分け的作品と言えるのではないでしょうか。この「ショウ・ボート」の翌年に発表されたカールマンの「シカゴの伯爵令嬢」(1928年)では、随所にこの「ショウ・ボート」を髣髴とさせるフレーズ、和声、リズムが聞き取れます。「ショウ・ボート」の方にもワルツ調の「You Are Love」など、ウィンナ・オペレッタを思わせる曲もあります。ウィンナ・オペレッタがウィーンのワルツとハンガリー調の曲の組み合わせで出来ていたとすると、ハンガリー調の曲のかわりにアメリカン・フォークやジャズ調の曲を取り入れたのが、このカーンのミュージカルということです。相互に影響を与え合うようになった時、ミュージカルは1つの地位を確立しえたと言えるでしょう。そして、それは世界がヨーロッパからアメリカに中心を移していく、その動きと見事に重なっていると言えます。
このCDは1962年スタジオ・キャスト・レコーディング。ロバート・ラッセル・ベネットによる見事なオーケストレーションに加えて、フランツ・アラースの指揮が、上記のような感想を一層強めさせているのかもしれません。オペレッタに欠かせない2人の指揮者ヴィリー・マッテスとフランツ・アラース。マッテスがウィンナ・オペレッタからフレンチ・オペレッタ(オッフェンバックのオペレッタのドイツ語版をEMIに多く録音しています)へと広げていくのに対し、アラースの方は、ウィンナ・オペレッタからアメリカン・ミュージカルへと広げています。この2人の振り分けもまた興味あるところです。

ビング・クロスビー、ポール・ロブソン、オリーブ・クライン、ポール・ホワイトマン楽団、
アル・ジョンソン、ヘレン・モーガン、ルイス・アルター、ジェイムス・メルトン、ジョセフ・E・ハワード、
ヴィクター・ヤング指揮ブランスウィック・コンサート・オーケストラ、
アラン・ジョーンズ、カロル・ブルース、ジャン・クレイトン、チャールズ・フレデリックス、コレット・リオンズ、
エドウィン・マッカーサー指揮ショウ・ボート・オーケストラ、
アルトゥーロ・ロジンスキ指揮クリーヴランド管弦楽団
Rec.1928−1947
Pearl GEMS 0060(輸入盤)MONO、2枚組
★★
もう1枚は、ロバート・ラッセル・ベネットによる編曲の1946年録音の他に、彼の編曲以前の、初演以降の様々な演奏を集めていて、資料的にも貴重なCDです。古くは1928年のポール・ホワイトマン楽団をバックに様々な歌手によって歌われる録音。ポール・ホワイトマン楽団はガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」をひっさげてヨーロッパ公演を行い、ヨーロッパに一大ジャズブームをもたらした楽団です。さらにアルトゥーロ・ロジンスキ指揮クリーヴランド管弦楽団による約20分の管弦楽組曲(モートン・グールド編曲、1941年録音)も掘り出し物です。いずれも録音はもちろん古くはありますが、Pearlによる復刻リマスターがよく、たいへん聴きやすくなっています。2枚で約160分たっぷりと収録されています。


ジョージ・ガーシュウィン「オー・ケイ」

初演:1926年11月8日 ニューヨーク・インピリアル劇場

台本:ガイ・ボルトン&P.G.ウォードハウス、作詞:アイラ・ガーシュウィン

オーケストレーション:ラッセル・ワーナー
指揮:エリック・スターン
セント・ルークス・オーケストラ、合唱団
ケイ:ドーン・アップショウ
デューク:ロバート・ウェステンバーグ
ポッター:パトリック・キャッシディ
マッギー:アダム・アルキン
P.ラックストン:リズ・アルセン
D.ラックストン:ステーシー・A・ローガン
Rec.1994.5 ニューヨーク・ヒット・ファクトリー etc.
NONESUCH 7559−79361−2(輸入盤)、WJ−ノンサッチ WPCS5254(国内盤’98−10)
★★
兄アイラとのコンビによる4本目の作品。256回のロング・ランを記録。「Someone To Watch Over Me」や、「Do,Do,Do」、「Clap Yo’Hand」などのおなじみのメロディがこの作品から1人立ちしていきました。ケイ役でドーン・アップショウが出ているのが、このCDの売りのひとつです。さすがやわらかくも美しい声を聞かせてくれます。


ジョージ・ガーシュウィン「ガール・クレイジー」

初演:1930年10月14日 ニューヨーク・アルヴィン劇場

台本:ガイ・ボルトン&ジョン・マッガワン、作詞:アイラ・ガーシュウィン

オーケストレーション:ロバート・ラッセル・ベネット
指揮:ジョン・マウチェリー
管弦楽団、合唱団
ケイト:ローナ・ラフト
ダニー:デイヴィット・キャロル
モリー:ジュディー・ブレイザー
ジーバー:フランク・ガルシン
スリック:デイヴィッド・ガリソン
パッツィ:ヴィキ・ルイス etc.
Rec.1990.2 ニューヨーク・BMGスタジオC
NONESUCH 7559−79250−2(輸入盤)、WJ−ノンサッチ WPCS5252(国内盤’98−10)
★★
兄アイラとのコンビによる7本目の作品。272回のロング・ランを記録。「I Got Rhythm」、「Embraceable You」、「But Not For Me」などがスタンダード・ナンバーとして今なお愛唱されています。ジョン・マウチェリーのもと、生きのいい演奏を繰り広げています。


★★★
ガーシュウィンのブロードウェイ・ミュージカル序曲から6曲をルロイ・アンダーソン、ドン・ローズの編曲で聴かせます。アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団による演奏は、テンポに変化を持たせた語り口のうまさに唖然とします。いい意味での手馴れた演奏はさすがです。(DECCA盤)

ブロードウェイ・ミュージカル序曲から6曲をフル・オーケストラに編曲(すべてドン・ローズによる)したマイケル・ティルソン・トーマス指揮バッファローpoの演奏。こちらはスマートな仕上がりになっています。フィードラー盤の語り口を耳にすると、やや物足りないですね。(CBS盤)
★★
ジョン・マックリン指揮ニュー・プリンセス・シアター・オーケストラによる演奏は、左の2枚がフル・オーケストラ編曲によるのに対し、オリジナル・バンド編成によっています。小編成と小気味よいテンポで、初演当初の雰囲気を彷彿とさせます。7曲収録。(EMI盤)
★★★
ガーシュウィンが最後の力を振り絞って完成させたオペラ「ポーギーとベス」(1935年)については、オペラ作品であることを強く意識してスケールの大きな演奏しているロリン・マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団による全曲(DECCA)盤が最高の名演を繰り広げています。ポーギーはウィラード・ホワイト、ベスがレオーナ・ミッチェル。1975年8月録音。
★★★
DVDによる映像盤「ポーギーとベス」全曲では、サイモン・ラトル指揮ロンドン・フィルによるEMI盤が唯一にして最高の仕上がりです。マゼール盤よりさらに生きのいい、溌剌としたドライブ感はピカイチです。ポーギーはマゼール盤と同じくウィラード・ホワイト、ベスはシンシア・ヘイモン。1992年12月録音。音だけのCDとしても出ています。
★★★
JAZZ盤「ポーギーとベス」については、マイルス・デイヴィス盤(CBS)やメル・トーメ&フランシス・フェイ盤(SAVOY)もありますが、やはりラッセル・ガルシア編曲・指揮のエラ・フィッツジェレルド&ルイ・アームストロング共演盤に尽きます。ルイのだみ声とトランペット、それにエラのチャーミングな声が不思議と溶け合っているのです。約66分、主要曲を網羅しています。1957年録音で、所有するCDの表示はモノラルとなっていますが立派なステレオ録音です。


レナード・バーンスタイン「ワンダフル・タウン」

初演:1953年2月25日 ニューヨーク・ウィンター・ガーデン劇場

台本:ジョセフ・フィールズ&ジェローム・ショドロフ、作詞:ベティ・コムデン&アドルフ・グリーン
指揮:サイモン・ラットル
バーミンガム・コンテンポラリー・ミュージック・グループ
ルース:キム・クリズウェル
アイリーン:オードラ・マクドナルド
ロバート・ベイカー:トーマス・ハンプソン
レック:ブレント・バレット etc.
Rec.1998.6 ロンドン・アビー・ロード第1スタジオ
EMI CLASSICS 07243 5 56753 2(輸入盤)、To−EMIクラシックス TOCE55074(国内盤’99−10)
★★
バーンスタインからも1曲。バーンスタインといえば、「ウェスト・サイド・ストーリー」(1957)が真っ先にあげられるべきかもしれません。ブロードウェイ・キャスト盤や映画のサントラ盤の他に、極めつけとしてバーンスタイン自演盤(キリ・テ・カナワ&ホセ・カレーラス、それにマリリン・ホーンやタティヤナ・トロヤノスまで出ている!! DG 457 199−2がCD1枚に収録)があげられるでしょう。また、バーンスタイン自身がオペレッタと呼んだ「キャンディード」(1956)もあります。こちらも自演盤(なんと、クリスタ・ルードヴィヒやニコライ・ゲッダが出ている!! DG 449 656−2 2枚組)です。しかし、これらをおさえて、この「ワンダフル・タウン」が絶対のお薦めです。この作品は、当初ルロイ・アンダーソンによって作曲されたものが出来が悪く(聞いてみたいものです)、没になり、あらためてバーンスタインが指名され、僅か4週間で完成させたそうです。そして開幕から’54年7月3日まで559回の公演という大ヒットを記録しました。ガーシュウィンからの伝統を確実に引き継いでいることを他の作品以上に感じ取ることができる上に、強烈なパンチの効いたキューバン・リズム、ジャジーな音列、またメロウなメロディなど、バーンスタインならではの才能の満ち満ちた作品として、後の作品と比べてもまったく遜色ありません。それをサイモン・ラトルが実に鋭い切れ味で聴かせてくれるのです。


フレデリック・ロウ「マイ・フェア・レディ」

初演:1956年

台本:アラン・ジェイ・ラーナー
オーケストレーション:ロバート・ラッセル・ベネット
指揮:ジョン・マウチェリー
ロンドン交響楽団、ロンドン・ヴォイシズ
イライザ:キリ・テ・カナワ(S)
ヒギンズ教授:ジェレミー・アイアンズ
ドゥーリトル:ウォーレン・ミッチェル
ピカリング大佐:ジョン・ギールガッド
フレディ:ジェリー・ハドリー
ピアース夫人:メリエル・ディキンソン etc.
Rec.1987.2 ロンドン・ヘンリーウッド・ホール
DECCA 421 200−2(輸入盤)、Po−ロンドン POCL3253(国内盤’93−9)
★★★
オリジナル・サウンド・トラック(→映像編)以上によく出来ているのは、マウチェリー指揮のロンドンsoとキリ・テ・カナワによるこの盤です。彼女のバーンスタイン「ウェスト・サイド・ストーリー」は、その歌唱法がホセ・カレーラスともども、やはり音楽とそぐわない感がありましたが、この「マイ・フェア・レディ」の場合は違和感なく、音としてのみ聴く場合は、むしろサントラ盤よりもすぐれています。やはりそれは、「マイ・フェア・レディ」という作品によることが大きいと思います。確実にオペレッタを継承した作品である証だと思うのです。他のキャストも個性的表現が万全です。一度映画「マイ・フェア・レディ」を見た後は、このCDで楽しむことをおすすめします。

音楽監督:Cyril Ornadel
イライザ:ジュリー・アンドリュース
ヒギンズ教授:レックス・ハリスン
ドゥーリトル:スタンリー・ホロウェイ
ピカリング大佐:ロバート・クート
フレディ:レオナルド・ウェアー
ピアース夫人:ベティ・ウールフェ etc.
Rec.1959.2 ロンドン
COLUMBIA SK60539(輸入盤)
★★
上記マウチェリー盤と、DVDと同一音源のオリジナル・サウンド・トラック盤の2種の他に、このオリジナル・ロンドン・キャスト盤もあります。こちらはブーロドウェイ初演と同じくジュリー・アンドリュースによるイライザとレックス・ハリスンによるヒギンズ教授のコンビで聴くことが出来ます。オードリー・ヘップバーンの吹き替えをやったマーニー・ニクソンも悪くはないけれど、やはりジュリー・アンドリュースの方が声質も個性も上です。


フレデリック・ロウ「キャメロット」

初演:1960年

台本:アラン・ジェイ・ラーナー
オーケストレーション:ロバート・ラッセル・ベネット&フィリップ・J・ラング
音楽監督:フランツ・アラース
アーサー王:リチャード・バートン
グエナヴィア:ジュリー・アンドリュース
騎士ランスレット:ロバート・グーレット etc.
Rec.1960.12 ニューヨーク・Columbia 30th Street Studios
COLUMBIA SK60542(輸入盤)

フレデリック・ロウがアラン・ジェイ・ラーナーとのコンビで発表した「ブリガドーン」(1947)、「幌馬車を塗れ」(1951)、「マイ・フェア・レディ」(1956)に続く4作目にして最後の作品です。ロウは、もう十分稼いだからと、この後引退したとか。ジュリー・アンドリュースはここでも澄んだ声で名唱を聴かせてくれます。実はこのCD、購入しようかどうかしばらく躊躇したのですが、ジャケットの隅に小さく表記されていたMusical Director FRANTZ ALLERSが目に入った瞬間、即決したのでした。買ってよかった。「How To Handle A Woman」、「If Ever I Would Leave You」、「I Loved You Once In Silence」、なかなかいい曲です。「マイ・フェア・レディ」ファンはぜひどうぞ。


リチャード・ロジャーズ「サウンド・オブ・ミュージック」

初演:1959年

台本:オスカー・ハマースタインU世
オーケストレーション:ロバート・ラッセル・ベネット
音楽監督:Frederick Dvonch
マリア:Mary Martin
トラップ大佐:Theodore Bikel etc.
Rec.1959.11 ニューヨーク・Columbia 30th Street Studios
COLUMBIA SK60583(輸入盤)
★★
リチャード・ロジャース&オスカー・ハマースタインU世のコンビによる名作。ジュリー・アンドリュース主演のミュージカル映画とそのサントラ盤が有名ですが、この盤はブロードウェイ(Lunt-Fontanne Theatre)で1959年11月16日に初演された直後の22日にオジリナル・キャストによってスタジオ録音されたものです。ボーナス・トラックとして、ウィリアム・スタインバーグ指揮ピッツバーグ交響楽団による約16分の管弦楽編曲メドレーが収録されています。


93


入門編へ 堪能編へ 映像編へ


このページで流れているMIDI は、
レハールの「メリー・ウィドウ」から愛の二重唱“唇は黙し”です。
演奏時間は3分02秒です。
ホームページ新感覚クラシック音楽ページ ICの提供です。

BACK