ブリティッシュ・フォークの影響
British Folk

Version 5.02


" The Spice of Life "
かつて Paul Simon , Bob Dylan , Bert Jansch らが演奏していたロンドンのパブ

Picture Coutesy of " The Spice of Life "
写真は " The Spice of Life " のご好意により掲載しております



 1964年、晩秋。ポールは再びイギリスを訪れていた。" Wendnesday Morining,3AM " <水曜の朝、午前3時> の不振。アメリカにはもう身をおくところはないなと感じていた。イギリスはブリティッシュ・フォーク・ムーブメントの全盛期。イギリスでなら自分の音楽を受け入れてくれるかも知れない。何より恋人のキャシーが待っていてくれる。ポールはそう思っていた。
 僕はイギリスで生活を始めたんだ。そこでもフォーク・シーン現象が巻き起こっていたしね。それは僕にとって二度目のメジャー進出だった。僕はそこで偉大なギタリストのマーティン カーシーからフィンガー・ピッキング奏法を習ったんだ。イギリスにはDavy Graham<デイヴィ・グレアム>、Bert Jansch<バート・ヤンシュ> 、John Renbourn<ジョン・レンボーン>のようにスタイルを確立したブルース・ギタリストが何人かいた。僕はスラッピング奏法()もそこで覚えたんだ。
 ( 1988年10月29日放送 " King Biscuit Flower Hour " ポール・サイモン インタビュー )

スラッピング奏法( slapping )
 エレキ・ベースにおけるチョッパー奏法のこと。弦を引っ張ったりしてパーカッシブに演奏する。ポールは、" Patterns " <パターン>、" Mrs.Robinson " <ミセス・ロビンソン> など多くの曲で応用している。


【 Key Persons 】

Martin Carthy <マーティン カーシー>
 1941年5月21日生まれ。
 ポールはマーティン カーシーからギターを直に習ったといっている。
 セルフタイトル・アルバム " Martin Carthy " (1965年)の8曲目にイギリスのトラディッショナル曲 " Scarborough Fair " <スカボロー・フェア>が収録されている。
 アルバム " Parsley, Sage, Rosemary and Thyme "<パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム>(1966年)に収録されたS&Gの同曲は、マーティン カーシーのギター・プレイ(不協和音)にポールが手を加え、ポールの " The Side Of A Hill " <ザ・サイド・オブ・ア・ヒル> の歌詞を詠唱として採り入れたもの。
 <スカボロー・フェア>の歌詞は、ボブ・ディランが1963年にリリースした2枚目のスタジオ・アルバム " The Freewheelin' Bob Dylan "<フリーホイーリン・ボブ・ディラン>の2曲目 " Girl From The North Country " <北国の少女> でも参考にしている。

Davy Graham - Davey Graham <デイヴィ・グレアム>
 1940年11月22日生まれ。日本国内における当初の日本語名表記は、デイビー・グラハム。
 S&Gのセカンド・アルバム " Sound of Silence " <サウンド・オブ・サイレンス>(1966年)に収録されたギター・ナンバー " Anji " <アンジー> は作者デイヴィ・グレアムを一躍有名にしてしまった。 " Anji " <アンジー> は、S&Gのコンサートではポールのアドリブが加わり千変万化している。
 また、<アンジー>とともにアルバム " Sounds Of Silence " <サウンド・オブ・サイレンス>に収録した " Somewhere They Can't Find Me " <どこにもいないよ> は " Anji " の変奏曲でもある。
 ギターの変則チューニング DADGAD は、1960年代にデイヴィ・グレアムが考案したもの。ポールは変則チューニング奏法についても " Baby Driver " <ベイビー・ドライバー>、" Armistice Day " <休戦記念日>、 " Groundhog " <グラウンドホッグ> などに応用している。
 さらに、アイルランドのフォーク・ソング " She Moved Through The Fair " (1963年録音)で聴けるデイヴィ・グレアムのインド音楽ラーガのシタールのような奏法もポールの " Patterns " <パターン>(1966年)に応用されている。

Judith Piepe - Judith Maria Sternberg <ジュディス・ピープ>
 1920年2月22日〜2003年6月19日。ソーシャル・ワーカー。
 ポールのロンドンにおける演奏を聴いてポールの才能に将来性を見出したジュディス・ピープは、ポールの支援活動を始める。ポールの録音テープのBBCラジオ " Five to Ten " における2週間に渡るオンエア、アルバム " The Paul Simon Songbook " <ポール・サイモン・ソングブック>の録音そしてイギリス国内における発売、これらはすべてジュディス・ピープの支援によるものである。

Kathy - Kathleen Mary Chitty <キャシー>
 ポールのかつての恋人。出会いは1964年。
 2008年5月7日放送のBS-i "music tide "「サイモン&ガーファンクル特集」では『キャシーはポールが生活費を稼ぐために演奏していたロンドンのパブで働いていた。』との解説があった。
 ポールの歌の中に、キャシーへの想いや当時の時代背景に対する回想がしばしば登場する。
" Kathy's Song " <キャシーの歌>、" America " <アメリカ>、" The Late Great Johnny Ace " <レイト・グレイト・ジョニー・エイス> ・・・。キャシーはポールの曲作りに多くのインスピレーションを与えている。
 キャシーについては唯一、" The Paul Simon Song Book " <ポール・サイモン・ソング・ブック>(1965年)のジャケット写真で確認することができる。このポールとのツーショットは、当時のガールフレンドだったスーズ・ロトロ( Susan Elizabeth Rotolo )といっしょに写っているボブ・ディランのアルバム " The Freewheelin' Bob Dylan " <フリーホイーリン・ボブ・ディラン>(1963年)のジャケット写真を意識したものかも知れない。
 Greg Nesteroff氏によりかつて運営されていたサイト " Acoustic Guitar Song Collection "の " The Paul Simon & Art Garfunkel FAQ " によれば、キャシーはポールと別れた後で結婚し3人の子供といっしょにウェールズの山の中の村でひっそりと暮らしているとのこと。



 ポールが " Kathy's Song " 、" April Come She Will " 、 " I Am A Rock " などのギター・プレイに多用する便利なコード " GaddC " もイギリス滞在期間中に<スカボロー・フェア>や<アンジー>を通して習得したものであろう。
 また、マーティン カーシーに紹介された<スカボロー・フェア>などのトラディッショナル曲やデイヴィ・グレアムの一部の曲で聴かれるインド・ラーガを始めとするエスニック・サウンドの存在は、その後のポールのサウンド作りに大きな影響を及ぼしたものと考えられる。
 『 アパートでは毎日が笑い、友情、インスピレーションに溢れていた。時期はずれるが、そのアパートにはフォークシンガーのAl Stewart<アル・スチュワート>、Jackson C. Frank<ジャクソン・C・フランク>、Sandy Denny<サンディ・デニー>、Roy Harper<ロイ・ハーパー> も住んでいた。時にはキャシーやアートもやってきた。客がひっきりなしだった。 』
 ( Victoria Kingston著 " Simon & Garfunkel The Biography " )
 ポールの暮らすジュディス・ピープのアパートは差し詰め水滸伝における梁山泊、昭和漫画史におけるトキワ荘のような状態であったらしい。
 ポールのイギリスにおける滞在は多くの名曲を誕生させ、かつその後のS&Gの名曲に大きな影響を与えた。
 1965年末、エレキギター・バージョンの<サウンド・オブ・サイレンス>のチャート急上昇により機は熟していった。
 ポールのイギリス滞在は必要な回り道として大きな役割を果たし、S&Gは世界に向けて躍進しようとしていた。



<参考文献>

CD " Martin Carthy " - Martin Carthy
Original Release : 1965年

1. High Germany / 2. The Trees They Do Grow High /3. Sovay / 4. Ye Mariners All / 5. The Queen Of Hearts / 6. Broomfield Hill / 7. Springhill Mine Disaster / 8. Scarborough Fair / 9. Lovely Joan / 10. The Barley And The Rye / 11. The Wind That Shakes The Barley / 12. The Two Magicians / 13. The Handsome Cabin Boy / 14. And A Begging I Will Go

CD " The Guitar Player " - Davy Graham
Original Release : 1963年

1. Don't Stop the Carnival / 2. Sermonette / 3. Take Five / 4. How Long, How Long Blues / 5. Sunset Eyes / 6. Cry Me a River / 7. Ruby & the Pearl / 8. Buffalo / 9. Exodus / 10. Yellow Bird / 11. Blues for Betty / 12. Hallelujah, I Love Her So / 13. She Moved Thru' the Bizarre/Blue Raga [Live] / 14. Misirlou [Live] / 15. Hey! Bud Blues [Live] / 16. Anji / 17. Fingerbuster / 18. Morena / 19. Happy Meeting in Glory / 20. Suite in D Minor

DVD " Guitar Maestros Series 1 - Martin Carthy "
Original Release : 2006年
リージョンコード1/リージョンコード2

トラッドを中心とした弾き語りとインタビュー。マーティン カーシーの渋い歌声とマーチン・ギターの澄んだ音色がマッチしている。以下はDVDの紹介広告。
MARTIN'S FIRST DVD FOR 15 YEARS!!
With more than 40 years as one of folk music’s giants, Martin is without a doubt, one of the most respected musicians on the scene. Having inspired generations of artists and often cited as an influence of both, Bob Dylan and Paul Simon. His distinctive performing style and use of alternate tunings makes him a true innovator, that coupled with his charisma and natural stage presence have won him an army of fans which spans musical genres and locations.

CD " Bert Jansch " - Bert Jansch
Original Release : 1965年
バート・ヤンシュのデビュー・アルバム。
[*] はCD化におけるボーナス・トラック。

1. Strolling Down the Highway / 2. Smokey River / 3. Oh How Your Love Is Strong / 4. I Have No Time / 5. Finches / 6. Rambling's Going to Be the Death of Me / 7. Veronica / 8. Needle of Death / 9. Do You Hear Me Now? / 10. Alice's Wonderland / 11. Running from Home / 12. Courting Blues / 13. Casbah / 14. Dreams of Love / 15. Angie / 16. Instrumental Medley 1964 [*] / 17. Angie 1964 [Live][*]

DVD " Fresh As a Sweet Sunday Morning : Live at Sheffield - Bert Jansch "
Original Release : 2007年
リージョンコード1
2006年4月22日、UK Sheffield Memorial Hall におけるバート・ヤンシュのライブ。
かつてポールと磨きあったというバート・ヤンシュのギター・テクニック映像を見ることができる。ギターはヤマハ。

1. It Don't Bother Me / 2. Strolling Down the Highway / 3. Rosemary Lane / 4. Comeback Baby / 5. Blackwaterside / 6. Lily of the West / 7. My Pocket's Empty Baby / 8. Morning Brings Peace of Mind / 9. Oh My Father / 10. Fresh as a Sweet Sunday Morning / 11. My Donal' / 12. Blues Run the Game / 13. Katie Cruel / 14. Carnival / 15. Trouble in Mind / 16. She Moved Through the Fair / 17. High Days / 18. Courting Blues / 19. Down Under / 20. Reynardine

" BBC4 - FOLK BRITANNIA "
Friday 3 February - Friday 3 March 2006

Davey Graham ( 1 )
Davey Graham ( 2 )
Roy Harper
Fairport Convention

BBC で放送されたドキュメンタリー番組の一部 You Tube からの映像。
出演は、マーティン カーシー、デイヴィ・グレアム、バート・ヤンシュ他。デイヴィ・グレアム " She Moved Through The Fair " 、バート・ヤンシュ版 " Anji " の演奏映像を見ることができる。

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