サンプル
2005.05.23.
「東方紅楼夢」で発表予定のアリスSSのサンプルです。
サンプルは予告なく変更されることもあります。
サークル参加の抽選漏れの可能性もあります。
一次創作の弾幕STG「東方シリーズ」に関する著作権は、サークル「上海アリス幻樂団」のZUN氏にあります。
当二次創作に関してのご指摘などは、サークル「DORK」の軍司までお寄せください。
2005.05.23.
序章、ワンシーンより
鬱蒼と繁った針葉樹はその木々の暗い光のため、密に連なった空気はたゆたう海の底に似ている。雨季ともなれば潤いをみせる森は、彼女にとってとても好ましくない環境でもある。
蔵書の手入れには大変神経を遣う。他の用途に出している人形たちも総出で作業する日などは、昼夜に及ぶこともある。それでも、蒐集は自分の目利きが全てであることを思えば、状態維持は、部分的ながら人形に任せられる部分もあるから、アリス自身の負担はそれほどでもなかった。
環境はしかし、この場所は他にない利点も多く備えていて、何よりもヒトが訪ねてこないのが一番だった。無論、例外もいることは否めないが。
時折、羽音とともに空気の亀裂が聴こえた。そんなときに時間を思い出してため息をつく。
悠久のときの流れにあって、この森の時の流れは彼女が支配しているといっても過言ではないが、少々うるさいのがやってきてからはそうでもなくなった。彼女自身にとっては瑣末なことであったのは言うまでもない。
「ああ、おかまいなく」
勝手に持って行くなとは確かに言った。
律義に魔理沙は本を勝手に持ち出すことはしなくなったが、まるで揚げ足を取るかのように次の日からはこうして書斎の前室にあるソファを使うようになっていたのである。
毎日ではないものの、勝手にやってきては勝手に上がりこんで書斎を物色する。気付いたときには帰った後なんてこともたびたびあった。
誰もいないサイドテーブルに本が重ねたままになっていたのは一度や二度のことではない。
上海人形が差し出した紅茶を仰々しく受け取ると、手を合わせて当たり前のようにカップを口にした。
「魔理沙。それは私に対するあてつけかしら?」
「固い事言いっこなしだぜ。こうやって読む必要もない本をここでこうやって読んでいるんだ。お前はありがたく思って良いぜ」
当たり前のように書斎から抜き出した魔術書が、うずたかく積み上げられていて、長時間居座るつもりで居るのは一目瞭然だ。
「シャンハイ。貴女もよ。これはお客様じゃ無いからお茶なんか出さなくて良いわよ。……って、何よりによってファースト淹れてるのよ?」
上海人形は首を傾げているが、魔理沙にすっかりなついている風にも見える。
術者への敵意がない限り、来客の接待をするように教えてあっても、個別の対応が出来ないわけでもなく、間違いなく上海人形は魔理沙を客人と認識していた。それは他でもなく、アリスの悪態の裏返しであることは認めたくない事実であった。
以下つづく。
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