ふきとり検査

ふきとり検査の目的
 
 食品の品質レベルの指標として一般細菌数や大腸菌群数があります。乳・乳製品
全般、清涼飲料水等に食品衛生法で規格基準があり、都道府県の条例で指導基準が
ある食品があります。基準の無い食品は、10万/g以下大腸菌群数陰性を目安として
います。腐敗に近い状態の食品では一般細菌数が1000万個/1gです。
 その基準や目標の数値をクリアするために、食品の製造、調理工程でどこを管理
するか、どこに危害があるか、衛生的になっているかを検証するためにふきとり検
査を行います。その結果を現場にフィドバックすることにより、危害防止と品質向
上に役立てることができます。
 見た目の清潔さと微生物的衛生とは違います。ふきんやまな板、手指を細菌検査
することにより、清掃や消毒の大切さを理解して貰うためにも効果があります。

検査対象
 ふきとり検査は、あらゆる食品ならびにそれらを取り扱う器具や機材、従事者の
手指などが検査対象となります。ふきとり検査は培地を直接検体にスタンプする方
法と滅菌水でぬらした綿棒で検体をふきとり、滅菌水に溶解して検査する方法があ
ります。

一般細菌数
  通常、一般細菌数とは、ある一定条件下で発育する中温性好気性菌数を意味し、食
品の微生物汚染の程度を示す最も代表的な指標です。一般細菌数は、食品およびそれ
らが製造加工された環境全般の細菌汚染状況を反映し、また食品の安全性、保存性、
衛生的取扱いの良否などの総合的な評価判断に使うことができます。 
 一般細菌数の多い食品は、一般的にその加工、製造、輸送、貯蔵などの過程で衛生
的かつ適切な取扱いがなされなかったり、温度管理が不適切であったことを示唆しま
す。食中毒菌や食品媒介消化器系感染症菌のほとんどが中温細菌であるところから、
中温性好気性菌数が多ければ、このような病原菌が存在する可能性も高いことを示し
ます。

大腸菌群
 大腸菌群は、糞便あるいは腸管系病原菌の汚染指標として使用されています。大腸
菌群はグラム陰性の無芽胞桿菌で、48時間以内に乳糖を分解して酸とガスを産生する
好気性または通性嫌気性と定義される一群の細菌です。
 従来、食品中における大腸菌群の存在は、糞便汚染があったとみなされ、赤痢菌、
コレラ菌、サルモネラなどの腸管系伝染病菌や食中毒菌の存在の可能性がある不潔な
食品と判定されてきました。しかし、大腸菌群の性状を示す菌は、ヒトや動物の糞便
とは直接関係ない自然界にも広く分布するところから、今日では安全性の指標という
よりは環境衛生管理上の汚染指標菌と考えられています。

ふきとり検査の実際
  食品衛生衛生検査指針微生物編2004(日本食品衛生協会)にふき取り検査に使用さ
れる方法が多数掲載されました。さらに、一般生菌数や大腸菌群数の測定は標準平板
菌数測定法が広く採用されていましたが、近年、簡易・迅速を目的としたさまざまな
手法が開発され市販されいていて、今回食品衛生衛生検査指針に掲載されました。
 新しい方法を含めて実際に調理場でふき取り検査を行ってみました。
 
スタンプ法
 まな板や包丁などの器具・器材、食品取扱い者の手指の表面の生菌数検査に使用さ
れ、小型のシャーレになどに入れた標準寒天培地面を検査材料表面に圧着することに
より、材料表面に存在する汚染細菌を寒天培地に移し取り、材料表面の生菌数を把握
しようとする方法です。培地や試料の調製が必要なく、きわめて手軽であるというこ
とから現場検査に広く使用されています。
日水製薬、栄研器材、日本BD、Merck、デンカ生研などからいろいろな商品名で市販
されています。
 しかし、一般生菌数、大腸菌群数、ブドウ球菌などの検査を行うと対象検査菌別に
スタンプするため、数10ヶ所の検査を行うと現場での作業は結構たいへんです。培地
をスタンプするため、検査対象ができるだけ平面なものに限定され、蛇口やツメの部
分、指の間等が検査しにくく、スタンプした所に培地が付くため後の清掃が必要とな
ります。

    
      手               冷蔵庫の取手

      
     しゃもじ          

試験紙法
 紙面に培地成分を乾燥状態で含ませてあり、試料調製は行うなど多少の手間と検査
設備は必要です。古くからある方法ですが、若い監視員さんには人気がありません。
しかし、現場ではふき取る作業だけで、試験室でふき取り液を一般生菌数、大腸菌群
数、ブドウ球菌と培養できます。透明な袋入りのろ紙ですから、検査結果がスキャナ
ーで取り込め、検査結果の利用が簡単にできます。
    
 現場には滅菌綿棒と20ccの生理食塩水を持っていき10ccづつ分注します。

     
 綿棒でふき取ります。ツメや指の間、蛇口など凹凸面のふきとりに便利です。
 ふき取った綿棒を元の袋に戻し、チャックして持ち帰ります。
 サン滅菌綿棒、大塚生食注を使用

   
 大腸菌群数とブドウ球菌用の試験紙に番号を記載
 綿棒を滅菌水に振りだし、試験紙に検液を吸着させ、元の袋に戻す。
 ろ紙は上部を持ち袋に戻したら手で扱った部分をミシン目から切り離す
 サンコリ(サン化学)を使用

  
  大腸菌群数            ブドウ球菌

乾式培地法
 一般生菌数や大腸菌菌群数の食品検査法として、従来の標準寒天培地およびデソキ
シコレート寒天培地の混釈法に加え、特殊な膜面に培地成分を乾燥状態で含ませてい
る乾式培地法の簡易・迅速検査キットが4種類採用されました。培地調製が不要です
が、試料調製は行うなど多少の手間と検査設備は必要です。いずれも従来法と同様に
試料液1ml中の生菌数を求めることができますし、ふきとり検査にも使用できます。
その4種類は
 @ ペトリフイルム(スリーエムヘルスケア)生菌数、大腸菌群数測定
 A シンプレート(GSKクレオス)生菌数、大腸菌群数測定
 B サニ太くん(チッソ)生菌数測定 
 C  コンパクトドライ(日水製薬)生菌数測定
 簡易法というと「簡単=精度が劣る」というイメージがありますが、いずれもAOAC
(公的分析科学者協会)で承認された検査法で、国際的には従来の寒天培地より通用し
ている方法です。特にペトリフイルムは国際的にも高い評価を受けています。

現場でのふきとり作業は、ろ紙法と同じでもよいし、ふきとり検査用の綿棒「ふきふ
きチェックU」も市販されています。滅菌スポイドも市販されていますので、小型の
定温器があれば、精度の高いふきとり検査ができます。
    
 ふきふきチェックU(栄研器材(株))
 
   

 サニ太くん(チッソ)       ふき取り液を1cc加える

    

   
  コンパクトドライ
  サニ太くんのカバーやコンパクトドライの蓋を開けて滅菌スポイドで検液を1cc加える

      
   コンパクトドライのブドウ球菌用は、卵黄液を滴下することのより、黄色ブドウ球菌の
 鑑別が容易にできる。